「平屋」とは建築物の区分の一つで、1階建ての建築物をさします。広々とした空間やバリアフリーで住む人の年齢を問わない優しさから近年人気になっています。特に土地が広い地方には、平屋の中古物件も多く存在するため、移住先の住まいとしてリフォーム前提で購入するのも一つです。
今回は、移住先での平屋暮らしに憧れる方のために、平屋のリフォームのメリットや注意点、費用相場や選び方を解説します。
平屋に住む魅力
平屋に住むのはどのような魅力があるのでしょうか。ここでは3つの魅力を説明します。
間取りがコンパクトで動線が短い
平屋はワンフロアにすべての部屋が収まるため、階段がなくコンパクトな間取りです。また、階段がない分、上下の移動がなくなるため、生活動線が短くなり部屋間の移動が少なくなります。例えば洗濯のときに一階の洗濯機と、二階の物干し竿を行き来するようなことがなくなるので、家事の時短に繋がります。
家族間でコミュニケーションしやすい
家の階層が分かれていると、異なる階の人の動きは分かりづらいものです。また顔を合わせる機会も減ってしまいます。しかし、平屋だと部屋間の距離が近く、家族間でお互いの気配を感じやすくなります。自然と家族間のコミュニケーションの機会も増えるでしょう。子どもや祖父母に何か起こらないか不安な方も、すぐに様子を確認できるので安心です。
メンテナンス・維持費用が抑えられる
戸建てだとメンテナンスが必要となる屋根と外壁の再塗装も、平屋だとコストを抑えられます。二階だと高所で作業するための足場に費用がかかりますが、平屋だと足場の大きさを小さくできたり、不要になったりします。またワンフロアに全ての部屋が収まるので冷暖房が効きやすく、光熱費も節約できます。
平屋に住む際の注意点
ここまでメリットを説明してきましたが、平屋で住むには以下のような注意点もあります。
家族のプライバシー確保がしづらい
ワンフロアにすべての部屋が収まり、家族の顔を合わせる機会が増えるため、逆に言えばお互いのプライバシーを確保しにくいでしょう。
浸水に弱い
台風や河川氾濫の時は、2階建てより浸水のリスクが高まります。また屋内に逃げ場を確保することもできません。
セキュリティやプライバシー確保に配慮が必要
ワンフロアに全ての部屋があるので、2階建てと比べて外部から侵入されやすくなります。また、窓から室内がすべて見えてしまうのでプライバシーの確保が難しくなります。セキュリティやプライバシー確保に関して何かの対策をするとよいでしょう。
場所によっては日当たりが悪くなる
平屋の中央にある部屋は窓がなくなるので、日が入らなくなります。また、周囲に高い建物が多い場合、それらの建物に囲まれて、家全体の日当たりが悪くなるでしょう。
中古の平屋をリフォームするメリット
移住の際に、中古の平屋を購入しリフォームを考えている方もいるでしょう。平屋のリフォームにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを解説します。
自由な間取りに改修しやすい
2階建てだと上の階の荷重による制限を受けるため、間取りの制限を受けますが、平屋は荷重制限がないので、自由な間取りに改修できます。たとえば、2階建てならば上階を支える制限上、壁にするしかないところを、平屋ならば開放的な窓に変更することができます。その上、2階建てより一階あたりの天井を高くすることも可能です。
2階建ては地域によって法令上の高さ制限を受けますが、1階でその制限を受けることはまずないためです。そのため広々と開放的な空間を実現できます。
シンプルな構造のため耐震性に優れている
一般的に平屋は2階建ての住宅と比べて、耐震性に優れているとされています。基本的に上の階が重い建物ほど地震の揺れは大きくなりますが、平屋だと上の階の重みがないため地震の揺れの影響を受けにくくなります。
将来を見据えたバリアフリー化がしやすい
平屋はワンフロアで動線が少なく、階段もないので2階建てと比べてバリアフリーに対応しやすいです。2階建てなら階段にスロープを付ける等の工夫が必要になりますが、その費用を大幅に節減できます。
リフォームをする際には「段差を少なくする」、「廊下や風呂に手すりをつける」、「入口にスロープを作る」などの工夫があれば、よりバリアフリーな住宅が実現できます。
平屋リフォームの費用相場
平屋リフォームにはどれくらいの費用がかかってくるのでしょうか。リフォームする箇所によって費用は異なります。ここでは修繕部分ごとのリフォーム費用の目安を示します。
リフォーム箇所 | 費用目安 |
壁紙の張替え | 1,000円/㎡ |
フローリングへの変更 | 10,000~35,000円/㎡ |
畳の新調 | 7,000~20,000円/畳 |
システムキッチンの交換 | 500,000~1,000,000円 |
ユニットバスの交換 | 500,000~1,500,000円 |
トイレの交換 | 200,000~500,000円 |
玄関スロープの設置 | 400,000~500,000円 |
手すりの設置 | 20,000~100,000円 |
耐震補強工事 | 500,000~3,000,000円 |
断熱材導入工事 | 4,000~30,000円/㎡ |
失敗しない!中古の平家物件を選ぶポイント
中古物件は「安さ」や「立地にこだわって探せる」等の魅力がある一方で、「古さ」や「構造がどうなっているかわからない」等の不安があると思います。ここでは中古物件を買う上でチェックすべき項目をまとめましたので、参考にしてください。
再建築・リフォームが可能か
中古物件を選ぶ際は、再建築、リフォームが可能な物件であることが重要です。再建築できない場合、現状以上の広さを建てることができなくなります。
再建築不可の物件は以下の条件に当てはまるものです。増築や大幅なリノベーションを計画される方は事前に確認しておきましょう。
- 前面道路が建築基準法上の道路(基本的に公道などの幅員4m以上の道路)ではない
- 接道(敷地が道路に接している部分)が2m未満
新耐震基準か旧耐震基準か
中古物件が新耐震基準で建てられているかは確認しておきましょう。
新耐震基準とは「 1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認において適用されている耐震基準」です。
旧耐震基準で建てられている物件の場合、毎年の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税から控除する、住宅ローン減税制度を利用できなくなります。
新耐震基準かどうかを判断するには、施主が保管する「確認通知書(副)」か、都道府県や市町村の建築課で発行できる「確認台帳記載事項証明」に掲載されている「建築確認申請」の日付を確認してみましょう。建築確認申請が1981年5月31日以前の場合、その物件は旧耐震基準で建てられています。
築年数だけで判断しない
住宅の良し悪しは築年数だけで判断できません。建築時の工事の状況やその後のメンテナンスにより、住宅の良し悪しは変わってきます。
「建築時の確認通知書や検査済書」、「増改築の証明書」等を確認し、様々な視点から判断しましょう。特に検査済証があれば、新築時に第三者のチェックがされているということになるため、その中古物件が建築基準の規定を満たしているということになります。
必ずしもこれらの書類が残っているとは限りませんが、あれば重要な判断材料になるので、中古物件の管理者に聞いてみるとよいでしょう。
外壁・内壁のチェック
建物の外壁・内壁は、建物の見た目や耐久性を左右する重要な要素ですので、しっかりと確認しておきましょう。特に外壁がモルタルの場合は、ひび割れやカビ見られるようであれば注意が必要です。寒暖差でひび割れができることがあり、壁の中に水分が入り込んで構造材を傷めている場合があります。
シロアリ被害
木造住宅の場合はシロアリの被害状況も確認しておきましょう。シロアリは木を主食とするため、木造住宅を大幅に傷めてしまいます。シロアリの有無を確認するには床に柔らかいところがないか、床に死骸がないか等をしっかり確認しておきましょう。
またシロアリは湿気を好むため、高温多湿な地域に建っていたり、雨漏りが発生したりしている住宅には特に注意が必要です。
平屋のリフォーム時に活用できる補助金制度
最後に平屋のリフォーム時に使える補助金を紹介します。リフォームは費用がかさみますが、補助金制度を使えば抑えられる場合もあります。積極的に活用しましょう。
補助制度 | 概要 | 助成額 |
こどもみらい住宅支援事業(リフォーム) | 子育て世帯・若者夫婦世帯が住宅取得する場合や、省エネリフォームを行う場合に補助金がもらえる制度 | 最大300,000円(600,000円*)/戸 *子育て・若者夫婦世帯が中古住宅取得と同時に改修する場合 |
既存住宅における断熱リフォーム支援事業 | 全国の既存住宅で高性能建材を用いた断熱改修・高性能蓄電熱設備の導入等の補助金がもらえる制度 | 最大1,200,000円/戸(戸建住宅) |
次世代省エネ建材の実証支援事業 | 工期短縮可能な高性能断熱材、蓄熱・調湿建材等、次世代の付加価値建材を用いたリフォームの補助金がもらえる制度 | 最大4,000,000円/戸(戸建住宅) |
住宅エコリフォーム推進事業 | 省エネ改修により住宅をZEHレベル性能とする場合に補助金がもらえる制度 ※ZEH…「エネルギー収支をゼロ以下にする住宅」のこと |
最大510,000円/戸(戸建住宅) |
長期優良住宅化リフォーム補助金 | 既存住宅の長寿命化や省エ化を行う子育て世帯が補助金をもらえる制度 | 最大250万円/戸 |
移住を検討している方は、中古の平屋リフォームも選択肢の一つに
平屋住宅は間取りがシンプルながら、開放感あふれるためにとても住みやすい空間です。家族が顔を合わせる機会も多くなる、体が不自由な人向けのバリアフリー化もしやすい等、家族一同安心して住める住宅であると言えます。移住先の住居を探されている方は検討してみましょう。
一方、浸水への弱さ、日当たりが悪くなる部屋が生じる等無視できない問題もあります。住宅の良し悪しも含めて、実物を見て初めて分かることも多いのでまずは住宅を訪れてみるとよいでしょう。リフォームをどうするかも含めて、ぜひ不動産業者やリフォーム会社に相談してみてください。