積雪寒冷地域など冬に寒くなる地域に移住する予定のある方は、床暖房の設置を考えているかと思います。床暖房は足元や部屋全体を暖められるため、冬を快適に過ごすのにはとても便利です。
しかし、中古物件を購入する際には、キッチンやお風呂など床暖房より優先度の高い設備をリフォームするケースが多いです。いざ床暖房のリフォームを考えたときに「費用はどれくらいかかるのか」「電気代は高いのか」など、さまざまな不安や疑問が湧くでしょう。そこで今回は床暖房リフォームの費用・工事期間・電気代などについて紹介します。
床暖房リフォームの費用削減のコツや注意したいポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
リフォームで設置できる床暖房の種類
まず最初は床暖房の種類について紹介します。リフォームで設置可能な床暖房は大きく分けて「電気ヒーター」式と「温水式」の2種類があります。それぞれ設置方法や特徴が異なるので、違いを知って好みの方を選びましょう。
電気ヒーター式
電気ヒーター式は、フローリングなどの床材の下に伝熱パネルなどを敷いて暖める方式の床暖房です。比較的簡単な施工で済むため、工事費用が安く済む傾向にあります。また、製品によっては温度を自動調節してくれるものもあり、利便性が高いです。
しかし、立ち上がりに時間がかかりゆっくりとしか床を温められないのがデメリットです。
温水式
温水式は床下に細い配管を通し、その中にお湯を流して暖める方法の床暖房です。温度にムラが生じづらく、少量の電力で動くため、月々の電気代も低くなる傾向にあります。
ただし、給湯機を設置する必要があるため、工事費用は高くなる可能性があるのがデメリットです。
床暖房のメリット
床暖房の大きなメリットの1つが空気が乾燥しづらい点です。床暖房の種類が分かったところで、次はメリットを解説します。
空気を乾燥させずに足元を暖められる
代表的な暖房器具のエアコンは乾いた風を送り出すため、どうしても部屋が乾燥してしまいます。一方、床暖房は足元からじんわりと部屋を暖めるので、空気中の水分が蒸発しづらいです。おかげで、湿度を保ったまま部屋を温かく保つことができます。
部屋全体をまんべんなく暖められる
床暖房で足元が暖められると空気の循環が起こり、部屋全体がじんわり暖まります。エアコンやストーブなどを使うと部屋の中で温度差が生まれやすいので、この点は床暖房ならではのメリットだと言えます。
加えて、床暖房は床全体に設置する必要はなく、部屋を暖めるには床面積の6~7割ほどで十分とされています。設置面積がそこまで多くない場合、エアコンなどの暖房器具よりも工事費用が安くなるケースもあるでしょう。
定期的なメンテナンスが少なくて済む
電気ヒーター式の床暖房の場合にはメンテナンスはほとんど必要なく、物理的に破損しない限り半永久的に利用できます。また、温水式の場合でも10年に1度程度の「不凍液」の交換と、15年に1度程度のユニットの修理や交換のみで済む製品がほとんどです。
一方、エアコンは年に数回はフィルターの掃除をしなければ暖房性能が落ちてしまいます。場合によっては故障してしまうケースも少なくありません。
この点を考慮すると、床暖房は他の暖房器具よりメンテナンスが楽だと言えます。また、メンテナンスが少ない分、手入れにかかる費用も抑えることができるでしょう。
動作音が静か
床暖房は送風の必要がないため大きな動作音がなく、他の暖房機器と比較してとても静かです。エアコンやファンヒーターなどは使用する際に機械音が発生してしまうため、寝るときや集中したいときにはストレスに感じる方も少なくないでしょう。その点床暖房の動作音はほぼないので、落ち着いた空間で過ごせます。
エネルギー効率が良い
床暖房は、床からの熱が壁や天井をつたい、部屋全体を温めるので、エネルギー効率がとてもいいです。エアコンは部屋の空気を温めますが、床まで温まるには時間がかかりますし、ファンヒーターは空間全体よりもスポットで温めることに特化しているので、部屋の空気を温めるには時間がかかる上、エネルギーを大きく消費します。使用料金を比較しても温水循環式床暖房であれば床暖房の方が比較的安価に利用できます。
インテリアデザインを邪魔しない
床暖房の大きな特徴のひとつが、空間の見た目が変わらない点です。近年エアコンはデザイン性の高いものが登場していますが、サイズが大きいため隠すことは難しく、存在感があります。ヒーターもデザイン性より機能性に特化しているので、他のインテリアと調和させることは難しいでしょう。その点床暖房は空間に何かを設置する必要がないため、部屋の見た目は変わらず、また使用しない時期も片付ける必要がありません。特にヒーターは使用しない時期、片付ける必要があるので、そういった手間がないことも大きなメリットと言えるでしょう。
床暖房のデメリット
床暖房には多くのメリットがある一方で、実はデメリットもあります。ここでは、床暖房のデメリットを詳しく見ていきましょう。
暖かくなるまでに時間がかかる
床暖房のデメリット1つ目は、暖かくなるまでに時間がかかる点です。特に電気ヒーター式は立ち上がりに時間がかかる傾向にあり、部屋が暖かくなったと感じるまでに1時間ほどかかることがあります。
灯油ファンヒーターやハロゲンヒーターの場合には電源を入れた瞬間から暖かさを感じられ、エアコンの場合でも30分ほど経過すると部屋が暖まってきます。この点、床暖房は部屋が温まる速度は他の暖房器具に比べて遅いと言えるでしょう。
より早く暖かさを感じたい場合にはタイマー機能などを活用して帰宅前に電源を入れておくなどの工夫が必要です。
家具や敷物を置きづらくなる
床暖房を設置している床には、家具や敷物を置くのが難しくなるでしょう。
種類や材質にもよりますが、熱によるダメージで素材が変形したりボロボロになったりするためです。また、床暖房の上に物を置くと熱がこもってしまいフローリングにも熱源にもダメージがかかります。場合によっては、床がひび割れたりゆがんだりすることもあるでしょう。
そのため、移住先の家に床暖房を導入する場合には、物の置き場所を工夫する必要があります。また、物件によっては床を熱に耐えられる素材にリフォームしなければならないかもしれません。
床暖房のリフォームにかかる費用と工事期間
床暖房のリフォームを検討している方が気になるのが、費用と工事期間ですよね。そこで、ここでは、2種類の床暖房リフォームを一軒家とマンションに分けて解説します。
一軒家の場合
まずは一軒家の場合の費用相場と工事期間をチェックしましょう。
電気ヒーター式 | 温水式 | |
6畳 | 30~50万円 | 35~65万円 |
---|---|---|
8畳 | 35~70万円 | 40~90万円 |
10畳 | 40~80万円 | 50~100万円 |
12畳 | 50~85万円 | 65~110万円 |
一軒家の場合の費用相場は30万円〜110万円ほどとなります。基本的に設置面積が増えるほど費用は高くなる傾向にあります。また、同じ広さでも費用に幅があるのは、直貼りか張り替えかの違いによるものです。
直貼りは現在敷いてある床材の上から床暖房を設置する施工方法で、敷かれている床材を剥がす手間がかからないため費用が安くなる傾向にあります。ただし、床材を重ねるようにして施工するので床が少し高く仕上がるのがデメリットです。
一方で張り替えは現在の床材を剥がして張り替えるため床の高さはほとんど変わりませんが、費用は高くなる傾向にあります。
工事期間に関しては直貼りなら1~2日、張り替えなら3~4日程度が目安です。
マンションの場合
電気ヒーター式 | 温水式 | |
6畳 | 30~50万円 | 35~65万円 |
---|---|---|
8畳 | 35~70万円 | 40~90万円 |
10畳 | 40~80万円 | 50~100万円 |
12畳 | 50~85万円 | 65~110万円 |
マンションの場合でも、基本的な費用は一軒家の場合と同じです。
ほとんどの場合、家の種類に関係なく部屋の広さで料金が決まるため、一軒家とマンションで大きな費用差はありません。一軒家と同じく、設置する面積が広いほど料金は高くなり、直貼りの方が料金は安く済むケースが多いです。
ただし、マンションでは床下に熱源を通すために複雑な工事が必要になる可能性があり、その場合には工事費用が高くなるかもしれません。
工事期間に関しては一軒家とほぼ同じで、直貼りなら1~2日、張り替えなら3~4日と考えて問題ありません。
床暖房でかかる電気代の目安
床暖房の設置費用について詳しく分かったところで、次は設置後にかかる1ヶ月の電気代を紹介します。電気ヒーター式、温水式とそれぞれの電気代を紹介するので参考にしてみてください。
電気ヒーター式 | 温水式 | |
6畳 | 1,800~3,900円 | 2,000円 |
---|---|---|
8畳 | 2,800~6,100円 | 2,800円 |
10畳 | 3,300~7,300円 | 3,900円 |
12畳 | 3,900~8,500円 | 4,900円 |
基本的に電気代は初期費用のかかる温水式の方が安い傾向にあります。また、設置面積が広いほど多くの電力を消費するため、電気代は高くなる傾向にあります。
ただし、エアコンやストーブなどの暖房器具を使用する場合、部屋の広さや使用時間にもよりますが、電気代が1万円近くになるケースもあります。そのことを考えると、床暖房を設置する方がリーズナブルだと言えるでしょう。
床暖房のリフォームを安く済ませる方法
先ほども少し触れた通り、移住先の物件に床暖房のリフォームには設置費用がかかります。しかし、数十万円~100万円を超える予算を用意するのはなかなか難しいです。
そんなときは、補助金を活用したりDIYで設置をしたりして初期費用を抑えましょう。
以下で、それぞれの方法を詳しく解説します。
補助金を活用する
床暖房設置の際には国や自治体から補助金を支給してもらえる場合があります。補助金には以下のようなものがあります。
- 既存住宅における断熱リフォーム支援事業(全国対象)
- こどもみらい住宅支援事業(全国対象)
- 住宅リフォーム補助金制度(埼玉県富士見市)
- 既存木造住宅省エネルギー改修工事等補助事業(奈良県橿原市)
床暖房に特化した補助金はありませんが、省エネを目的とした断熱工事に対する支援制度は数多くあり、それらを利用することで工事費用を抑えることができます。
例えば、国が実施する「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」を活用すれば、1戸あたり最大120万円の補助金を受け取ることができます。また、埼玉県富士見市の「住宅リフォーム補助金制度」であれば、工事費用の5%(上限10万円)が補助されます。
それぞれの制度は予算が終了すると打ち切られてしまうため、興味のある方は国や自治体のホームページを確認してみましょう。
参考:環境省補助事業「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」(四次公募)のご案内
参考:こどもみらい住宅支援事業について
参考:住宅リフォーム補助金制度について
参考:既存木造住宅省エネルギー改修工事等補助事業
DIYで設置する
初期費用をグッと抑えたいなら、DIYで設置する方法もおすすめです。
床下に断熱材を入れる、配管を通すなどの手間はかかりますが、必要な材料を揃えるだけで済むので、工事費用はかなり低くなるでしょう。場合によっては業者に依頼した場合の半分ほどの費用で済むことも少なくありません。
ただし、自分で行う場合には失敗するリスクがあることを覚えておきましょう。配管をお湯が循環しなかったり、床が暖まらなくなったりといったトラブルが起きる可能性があります。DIYで設置する際には、事前に工事方法を調べてから行うのがおすすめです。
床暖房のリフォームで失敗しないための注意点
床暖房は何も考えずに設置すると失敗する可能性があります。施工が終わってから後悔しないためにも、以下の点に注意しましょう。
必要な範囲にだけ設置する
床暖房の設置は床面全てに行う必要はありません。記事の前半で少し触れたように、床暖房は家具や家電を置く場所を除き、床全体の6~7割程度に設置すれば十分暖まるとされています。
そのため、普段の生活で長く過ごす場所(リビングなど)を中心に、予算を見ながら設置範囲を決めていくのがおすすめです。また、家具の下に床暖房があっても熱がこもるだけで部屋が温まらないので、部屋の中でどこに設置するかも考慮しましょう。
可能であれば家の断熱性も高める
床暖房と並行して窓や壁・床・天井の断熱工事もするのもおすすめです。
せっかく床暖房を設置しても、断熱性の低い家だと暖かい空気が逃げてしまい部屋が温まりづらいです。予算があれば、移住先の物件の壁や床・天井に断熱材を入れたり、断熱性に優れた二重サッシに交換したりする工事の実施も検討してみましょう。また、移住先の中古物件購入時に入念なリサーチを行い、断熱工事が完了している物件を選ぶことも有効な対策になります。
床暖房を設置して快適な生活を手に入れよう
今回はリフォームで設置できる床暖房の種類や工事期間、費用削減のコツなどを紹介しました。床暖房のリフォームは初期費用こそかかるものの、冬でも暖かく快適に過ごすのにはとても便利です。また、面倒なメンテナンスもほとんどなく、設置面積や種類を選べばランニングコストを抑えて使用可能です。
移住先の自治体によっては設置工事の費用を補助してもらえることもあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。ぜひ本記事を参考にしながら、移住先の物件に床暖房を設置することを検討してみてください。