土地の取得および保有にはさまざまな税金が発生します。移住を計画している人は、住宅に関わる税金だけでなく、土地にかかる税金の仕組みや金額についても知っておくとよいでしょう。
この記事では、土地にかかる税金の種類と、税金の計算方法について解説します。税金を軽減するポイントについても紹介しているので、移住を考えている人はぜひ参考にしてみてください。
土地にかかる税金の種類
土地の購入・売却・保有には、それぞれ下表のような税金がかかります。
土地の購入 | ・印紙税 ・登録免許税 ・不動産取得税 |
土地の売却 | ・印紙税 ・譲渡所得税 ・住民税 |
土地の保有 | ・固定資産税 ・都市計画税 |
移住する際は、どのような税金が発生するのか知っておくとよいでしょう。ここでは、土地にかかる税金の種類をシーン別に解説します。
土地の購入・売却時に発生する税金
土地の購入で発生する税金には、以下の3つがあります。
・印紙税
・登録免許税
・不動産取得税
印紙税とは印紙税法に基づき、課税物件に該当する文書に対して課せられる税金のことです。不動産売買契約書には印紙税が発生します。
登録免許税とは、不動産の所有権を移転する登記手続きで発生する税金のことです。税率は登記の種類によって異なります。
不動産取得税は、土地や家屋の購入・贈与・建築などにより不動産を取得した際に課せられる税金です。
土地の売却にかかる税金は、以下の3つがあります。
・印紙税
・譲渡所得税
・住民税
印紙税は土地の売却時にも発生します。譲渡所得税とは、不動産の譲渡所得に対してかかる税金のことです。
所得税とは、所得金額から所得控除を差し引いた「課税所得」に対してかかる税金のことです。土地の売却で利益が出た際には、所得税が発生します。
住民税も同様に、土地の売却によって利益が出た際に課せられる税金です。
土地の保有にかかる税金
土地保有には固定資産税と都市計画税がかかります。固定資産税とは、土地や家屋といった固定資産、工場の機械や会社の備品といった償却資産に対して発生する税金のことです。固定資産は3年に一度評価替えが行われ、その評価額をもとに課税標準額が決まります。
都市計画税とは、市街化区域内に土地や家屋を所有している人に対して毎年課される地方税のことです。この市街化区域とは、都市計画法が指定する都市計画区域のことを指します。
所有している土地が市街化区域内かどうかは、自治体の窓口や不動産業者に確認してみてください。
土地は地目の種類によって課税金額が変わる
ひとくちに「土地」といっても、住宅を建てる土地なのか、田んぼなのかなど、用途によって種類が分けられます。その区分を「地目」と呼び、地目の種類によって課税金額が変わる点に注意しなくてはいけません。
移住して住宅を建てる場合は「宅地」となりますが、宅地には税金を軽減する特例があります。移住先で地目が「農地」である土地に住宅を建てたいとなれば「宅地」に変更しなくてはなりませんが、市街化調整区域や生産緑地では、原則的に地目変更できないことも注意しましょう。
土地購入にかかる税金と計算方法
移住で土地を購入する際は、どのような税金がかかり、どのように計算するのか知っておくとよいでしょう。ここでは土地購入にかかる3つの税金と計算方法を紹介します。
印紙税
印紙税は売買の契約に必要となる税金です。印紙税額は1通あるいは1冊につき、記載された契約金額によって以下のようにかかります。
~1万円 | 非課税 |
10万円未満 | 200円 |
50万円以下 | 400円 |
100万円以下 | 1千円 |
500万円以下 | 2千円 |
1千万円以下 | 1万円 |
5千万円以下 | 2万円 |
1億円以下 | 6万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
登録免許税
登録免許税は土地を取得し、登記する際に発生する税金です。以下の計算式で求めます。
登録免許税額=固定資産税評価額×登録免許税率
登記の種類によって登録免許税率は異なります。土地の売買による登録免許税率は「2.0%」です。しかし、令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合は軽減税率が適用され、「1.5%」となります。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や家屋といった不動産を取得した際に発生する税金です。ただし、相続で取得した際には課税されません。不動産取得税の計算方法は以下のとおりです。
不動産取得税=固定資産税評価額×不動産取得税率
不動産取得税率は3%です。家屋(非住宅)の場合、税率は4%となっています。また令和6年3月31日までに宅地を取得した場合、課税標準額は価格の2分の1となります。
なお不動産取得税は固定資産税と違い、取得した時の価格によって課税されるため、年数経過による減価はなく、納めるのも一度だけです。
移住時の土地売却で発生する税金と計算方法
移住にともない、以前住んでいた土地を売却する際にも税金がかかります。譲渡所得、住民税は土地の所有期間によって税率が異なる点に注意しましょう。ここでは、土地売却で発生する税金の計算方法を紹介します。
印紙税
印紙税は土地の購入時に発生しますが、売却でも印紙税が必要です。契約金額による税額は、購入時にかかる印紙税と同額です。
譲渡所得税
譲渡所得税は不動産や株式などの売却によって得た利益に対してかかる税金です。譲渡所得税は所得税と住民税、復興特別所得税を含んだ税金の合算となります。
復興特別所得税は東日本大震災からの復興支援に必要な財源の確保として、課せられることとなった税金です。平成25年1月1日から令和19年12月31日までに発生する所得について、源泉徴収される所得税の2.1%が課税されます。
不動産売却は分離課税方式で計算します。分離課税方式とは、給与所得や事業所得と切り離して税金を計算する仕組みのことです。
土地の売却でかかる譲渡所得税の計算式は以下のように算出します。
譲渡所得=土地の売却価格-(取得費+譲渡費用)
取得費は保有している不動産を取得する際にかかった購入代金のことです。不動産会社に支払った仲介手数料や購入時にかかった印紙税や登録免許税、不動産所得税などが含まれます。
土地の売却において特別控除を受けた場合は、その数値分も差し引いて計算しましょう。課税所得を算出したら税率をかけますが、税率は土地の所有期間によって異なります。
土地の所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」、土地の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となります。
短期譲渡所得の税率は30%、長期譲渡所得の税率は15%です。そこからさらに復興特別所得税の2.1%がかかります。節税したい場合は、土地の所有期間が5年を超えてから売却するとよいでしょう。
住民税
住民税も所得税と同様に、土地の売買で利益が生じた際に納める税金です。土地の所有期間によって税率は以下のように異なります。
土地の所有期間が5年以下(短期譲渡所得):9%
土地の所有期間が5年を超える(長期譲渡所得):5%
住民税も土地を長く所有することで税率が下がるため、5年を超える長期所有で節税になります。
移住後の土地保有にかかる税金と計算方法
移住後の土地保有にかかる税金は、「固定資産税」と「都市計画税」の2つです。ここでは、それらの税金の計算方法を紹介します。
固定資産税
固定資産税とは、土地や家屋を保有する際にかかる税金のことです。固定資産税は固定資産の評価額に標準税率である1.4%をかけて求めます。
固定資産税額=課税標準額(固定資産の評価額)×税率1.4%
固定資産税の評価額は、「課税証明書」「固定資産課税台帳」「固定資産評価証明書」によって調べることが可能です。
なお、特別軽減措置を適用する場合は課税標準税額は低くなります。例えば、小規模住宅用地(1戸あたり200平方メートル以下の部分)では評価額の6分の1、一般住宅用地(1戸あたり200平方メートルを超える部分)では評価額の3分の1となります。
参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局
都市計画税
都市計画税は都市計画区域に土地を保有している場合に課される税金です。固定資産税と同様に、固定資産税の評価額から課税標準額を計算します。
都市計画税=課税標準額×標準税率
なお、標準税率は地域によって異なりますが、上限は0.3%と定められています。都市計画税の住宅用地にも軽減措置があり、小規模住宅用地では評価額の3分の1、一般住宅用地では評価額の3分の2となっています。
土地の税金を軽減する方法
移住に際し、土地の取得・所有にはさまざまな税金がかかるため、節税したいと考える人も多いでしょう。ここでは土地の税金を軽減する方法を2つ紹介します。
建物を建てると住宅用地の特例が適用される
建物は更地のままよりも、住宅を建てたほうが節税になります。家を建てることで住宅用地の特例が適用され、固定資産税や都市計画税の課税標準額が下がるためです。
とはいえ、家屋の評価額が著しく高い場合は、更地のままのほうが節税になる可能性もあるため注意しましょう。
また土地や建物を取得した際には、不動産取得税がかかります。しかし、土地を先に購入しておいて、少し時間が経ってから建物を建てるケースもあるでしょう。
そういった場合でも、土地の取得から3年以内に新築すれば不動産取得税の軽減措置を受けられます。その際は、自身で申請が必要です。
分筆で固定資産評価額を下げる
土地の固定資産税は、固定資産の評価額に標準税率である1.4%をかけて求めます。つまり、固定資産の評価額を下げることで節税になるのです。
分筆とは、1枚の登記簿から土地を分けることを指します。分筆して評価額の低い土地を作ることで、総合的に土地の評価額が下がるケースもあるのです。とはいえ、登記や測量には費用がかかるため、費用対効果が必ずしもあるとは言い切れません。
固定資産税が上がるケース
土地を所有している場合、毎年固定資産税を納めなくてはいけませんが、特定の状況下において固定資産税が上がる可能性がある点に注意が必要です。ここでは、固定資産税が上がるケースを2つ紹介します。
住宅を取り壊した
移住のために現在所有している住宅を取り壊す場合は、取り壊すタイミングに注意が必要です。固定資産税は1月1日時点の固定資産所有者に課税されます。12月に住宅を取り壊し、1月1日に土地を保有していた場合、住宅用地の軽減措置は適用できません。
住宅用地の軽減措置を利用する場合は、1月1日まで家を取り壊さないようにしましょう。年末に住宅の取り壊しが決まっている場合、1月2日以降に取り壊したほうがお得になる可能性があります。
空き家を放置している
更地のままよりも、住宅を建てたほうが住宅用地の特例により固定資産税が軽減できます。しかし、空き家放置が問題視されたことから、平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が設立されました。
空き家のまま放置しておくと、特別空家に指定され、住宅用地の特例が適用できなくなる可能性があります。住む予定がない場合は、早めに処分するか、建て替えて何かしら土地を活用するとよいでしょう。
土地にかかる税金でよくある質問
ここでは、土地の税金に関するよくある質問と回答を2つ紹介します。
固定資産税は自分で確認できる?
自分が納めている固定資産税を確認する方法は、自宅に届く納税通知書で確認できます。毎年4〜6月ごろになると納税通知書が送られてくるため、そこで固定資産税や都市計画税をいくら納めるのか確認できます。
固定資産税の課税間違いに気づいたらどうすればいい?
納税通知書の金額が必ず正しいとは限らないため、課税間違いが起こる可能性もゼロではありません。自治体によって対応は異なる場合がありますが、基本的には納税通知書に記載されている連絡先に電話して対応を確認すれば大丈夫です。
土地にかかる税金の仕組みを知ってから移住計画を立てよう
この記事では、土地の売買や所有に対してさまざまな税金がかかることを説明しました。移住で土地を取得する際には、どのくらい税金がかかるのか、おおよそでも知っておくとよいでしょう。
また不動産取得税には軽減措置があり、期限が決められている点にも注意が必要です。できる限りかかる税金を軽減し、移住計画を立てましょう。