地方から都会へ就職・転職した人も、年齢を重ねることで価値観やライフスタイルが変わり、近い将来地元や実家に近い土地で暮らしたいと考える人も多いのではないでしょうか。家族の事情や結婚を機に移住を検討する人もいるでしょう。
そのように移住を検討する際にUターンやIターンという言葉が出てきますが、その違いが何か知っていますか?
この記事では、UターンとIターンの違いや地方に住むメリットとデメリット、地方移住で受けられる支援について解説します。
UターンとIターンの違い
まずはUターン・Iターンの意味を解説します。
生まれ育った地へ戻る「Uターン」
Uターンとは、生まれ育った土地を入学や就職などを機に離れ、再び生まれ育った土地に移り住むことを指します。その移動経路がUを描くことからUターンと言われています。
例えば、「静岡県で生まれ育って東京に上京し、再び静岡の実家に移住する」というケースがUターンに該当します。
都会から地元へ戻る理由として「通勤ラッシュを避けたい」「自然の多い地元で暮らしたい」など都会疲れからくるものや、実家を継ぐ、親の介護など、やむ得ない事情があるようです。
都会出身者が地方へ移住する「Iターン」
Iターンとは、都会で生まれ育った人が入学や就職を機に地方へ移住することです。例えば、「東京で生まれ育って、農業を営むため滋賀県に移住する」というケースがIターンに当たります。
地方のゆったりした生活環境や豊かな自然など、都会にない魅力を感じてIターンを決断する人が多いです。
自治体によっては移住者へ就職や起業の支援を行っており、一昔前に比べてIターンしやすくなっています。
Uターン・Iターンが注目される理由
コロナ禍を経験したことにより都心で働く若年層からUターン・Iターンへの関心が高まっています。
転職サイト「Re就活」が2020年4月から5月にかけて実施したアンケート調査によると新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言やテレワークの推進などにより、Uターン・Iターンでの転職を希望すると36.1%が回答しました。
2020年2月の新規会員登録者のデータ(同21.8%)と比較すると、14.3ポイント増加しており、20代転職希望者のUターン・Iターンや地方での転職意向が増加傾向にあることが伺えます。
また、Uターン・Iターンや地方での転職を希望する理由として「地元に帰りたいから」や「都市部で働くことにリスクを感じたから」など、感染への懸念に関する回答が多くみられ、コロナ禍において価値観が変化したと言えます。
これまで地方での就職・転職は、都心に比べて選択肢が少なかったですが、テレワークの普及により、働く場所を選ばずどこでも仕事ができるようになったことも、Uターン・Iターンが注目される理由の一つです。
参照:「新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言により、「U・Iターンや地方での転職希望者」が増加」
Uターン・Iターンのメリット
続いて、Uターン・Iターンのメリットを見ていきます。
就職や転職を支援してもらえる
まず、就職や転職の支援を受けられます。支援内容は、職場の通勤にかかる交通費の補助や、移住先での就職が決まった際のお祝い金の支給など、金銭的なサポートがメインです。
支援がある地域に移住すれば、仕事にかける費用を抑えて生活することができます。
自然に囲まれて生活できる
自然の中で過ごせるのもメリットの1つです。
都会は人混みやビルが多く、公園や山などの自然が少ないです。一方、田舎は山や川などの自然が家のすぐ近くにあり、自然を身近に感じながら生活できます。
地域によっては、キャンプやサーフィンなど、自然の中でしか体験できないアクティビティを楽しむこともできます。
子育てがしやすい
子育てがしやすいのも地方ならではの魅力です。人口が集中している都会では、いわゆる待機児童問題もあり、保育園に子供を預けることが難しい状況が続いてました。現在は解消されつつありますが、今後はどうなるかわかりません。子供を預けられない場合、共働きしている家庭では仕事と育児の両立が難しいです。
しかし地方では保育園に空きがあるため、仕事をしながらでも子育てに取り組めます。また、地方ならではの幼児教育として、自然保育にも関心が高まっています。幼少期から自然体験させることで子どもの可能性をのびのび育てることができます。
地域によっては医療費助成制度(定められた年齢まで医療費が無料)や誕生日やお祝い事にプレゼントが贈られるなど子育て支援に力を入れている自治体もあります。
Uターン・Iターンのデメリット
Uターン・Iターンにはメリットだけでなく、デメリットもあります。欠点を把握しておくことで、移住後の後悔を防げます。
収入が減る可能性がある
都心と比べて地方の給与は低い傾向にあるため、Uターン・Iターンで転職を考えている人は、収入が下がる可能性があります。
厚生労働省が発表している「地域別最低賃金の全国一覧」では、東京が1,041円に対して最も低い沖縄は820円と、221円もの差があります。1日8時間、1ヶ月20日として単純計算しても1年で約42万円もの収入差が生じます。
求人サイトを見ても、東京の方が給与が高い傾向にあり、企業によっては地域手当が東京の方が多いケースもあるため、現在の収入より下がる可能性は高いと言えます。
生活スタイルに馴染めない可能性がある
都会での暮らしに慣れている場合は、生活スタイルに順応できない可能性があります。
都会では近所付き合いがないことが多いですが、地方では活発な近所付き合いがあります。また、地域によっては行事への出席を求められることがあり、人との交流が盛んです。
人との付き合いが苦手な人には、少し億劫に感じてしまうかもしれません。
移動手段は車メインになる
移動手段が制限されるのもデメリットだと言えます。住む場所にもよりますが、地方ではスーパーや病院が徒歩圏内になく、移動するには車が必要になります。そのため、移住する際は車の購入もセットで検討した方がいいでしょう。
Uターン・Iターンの際に受けられる支援
移住希望者は各自治体の支援を受けられます。移住地の自治体によって異なりますが、期待できる支援は下記の3つです。
- 就職・転職の支援
- 交通費の支援
- 移住の支援
それぞれ事例とともに解説していきます。
就職・転職の支援
まず、就職や転職の支援が受けられます。「Uターン・Iターン」でも触れたとおり、交通費の補助やお祝い金の支給など、金銭的な援助がメインです。自治体によっては、研修を実施し、就職そのものをサポートしてくることもあります。
支援内容が手厚く、生活の基盤である仕事をしっかりサポートしてもらえるのが特徴です。
石川県の例
石川県では、中小企業支援の一環として、東京23区内から移住し県内で就職した人に金銭の支給を行っています。
世帯の場合には最大100万円、単身者の場合には最大60万円が支給され、大きな額を補助してもらえることが分かります。
交通費の支援
自治体の中には、交通費の支援を行っているところもあります。具体的には、通勤や通学にかかる費用の一部を自治体が代わりに負担してくれます。
地方移住のデメリットである交通費の高さを軽減し、費用を抑えて生活することが可能です。
ただ、自治体によっては通勤や通学の距離に基準を設けており、職場が家から近い場合には支援を受けられない可能性があります。
北海道三笠市の例
北海道三笠市では、遠距離通勤している人に向けた交通費補助支援を実施しています。
交付額は月々10,000円を上限としており、週の所定労働日数が5日以上であることが条件です。
移住の支援
移住に関する支援も受けられます。住宅建造や改築にかかる費用の一部を負担してもらえたり、空き家を提供してもらえたりします。
移住にかかる費用を軽減できる一方、十数年住むことが条件になっている場合もあり、他の地域へ引っ越しづらくなるのがデメリットです。
名古屋市の事例
名古屋市では、「空き家改修費等補助金」という支援制度があります。
「空き家の改修工事にかかる費用の1/2を市が負担する」といった支援内容です。空き家をリフォームして住みたい人にとっては、とても便利な支援です。
参照:名古屋市空き家活用支援事業費補助金
情報収集をしたうえで地方移住するか判断しよう
一昔前は、利便性の高さから都市に近い地域が移住先として人気でした。ですが、近年は都市に近い地域は人口流出が多く、街づくりに力を入れている地域へ移り住む人が増えています。
地方は都会に比べ自然が多く、子育てもしやすいです。一方、人によっては交流が盛んな生活スタイルになじめなかったり、都会よりも交通が不便な生活にストレスを感じたりする人もいるでしょう。
Uターン・Iターンをする際は、移住のメリットデメリットを把握し、情報収集をしっかり行なってから、判断しましょう。