札幌市は人口が100万人を超える大都市でありながら自然環境がとても豊かで、移住先として人気です。
住環境の良さに魅力を感じ、「思い切って移住してみたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。移住後に後悔しないようにするには、仕事や子育てなどの実態を把握し、自分のライフスタイルに合っているかを判断することが重要です。
そこで今回は、札幌への移住を考える方に向け、移住におすすめの地域やメリット・デメリット、住環境などを解説します。
札幌移住のメリット
札幌への移住にはどのようなメリットがあるのか解説します。
中心街が発展しており都会的な生活が送れる
札幌市は人口が100万人を超える大都市で、札幌駅周辺やすすきのなど中心街にはレストランやショッピングモールなどの商業施設が数多くあります。
そのため、気軽に買い物に出かけたり、食事に出かけたりしやすいです。また、交通網が発達しているため、県内や他府県の移動にとても便利です。
都会的な生活を送りたい方にはぴったりの移住先だと言えるでしょう。
海産物が新鮮でリーズナブル
オホーツク海や日本海の新鮮な海産物を安価で楽しめることも札幌の魅力です。
道内には函館や石狩など漁業が盛んな地域が数多くあり、札幌でもとれたての海産物を毎日購入できます。特に、水揚げ量の多いほたてやタラといった食材を楽しみやすいです。
海産物は新鮮なことに加え、価格もリーズナブルです。中でも、鮭は特に安く、2018年度の調査では日本全国平均の1/4ほどの価格でした。
参考:グラフで見る北海道の漁業
参考:価格動向調査(魚介類)の調査結果
札幌駅周辺は電車・バスなどの交通網が充実している
札幌には、JR北海道や札幌市営地下鉄、北海道中央バスなど様々な交通機関が通っています。そのため、市内では行きたい場所にすぐ移動できます。また、市内の札幌駅は交通の拠点となっており、道内のほかの都市や県外にもすぐ移動しやすいです。
電車やバスの本数も10分に1本以上確保されていることが多く、移動で困ることは少ないでしょう。
札幌市内には大倉山や平和の滝など、電車やバスで行きやすい距離でありながら自然を感じられるスポットが数多くあります。都会だけではなく自然も味わいたい方、自然環境の中で子どもを育てたい方にはとても魅力的な場所だと言えます。
梅雨がなく夏が過ごしやすい
札幌には梅雨がありません。梅雨前線が北海道に来る頃には弱まってしまうためです。そのため、雨や湿気に悩まされることなく、快適に初夏を過ごせるでしょう。
ただし、6月頃には「蝦夷梅雨」と呼ばれる、小雨が2週間程度降り続く期間があります。本州の梅雨と比べると期間は短く雨も弱いですが、雨が降る期間があることは認識しておきましょう。
札幌移住のデメリット
札幌にはメリットだけでなく、デメリットもあります。移住してから後悔しないよう、事前に把握しておきましょう。
12月から3月は寒さが厳しい
札幌市は日本の中でも北に位置する都市であるため、12月から3月は寒さが厳しいです。
気象庁のデータによると、1991〜2020年の12月から3月の平均気温は0度を下回る日が多くあります。また、日照時間が非常に短く、12月にはほぼ毎日雪が降るため、寒さが苦手な人は生活しづらいかもしれません。
季節風が多く風が強い
札幌は季節風の通り道になっているため、1年を通して風の強い日が多いです。気象庁の統計では、瞬間最大風速は一年を通して東京や大阪の二倍以上になります。
洗濯物が吹き飛ばされたりさしていた傘が壊れたりなど、生活には少し不便です。
参考:「気象庁/各種データ・資料/過去の気象データダウンロード」
荷物の発送に時間がかかる
札幌は本州から海を隔てているため、荷物の郵送に時間がかかります。
ゆうパックで東京から札幌まで荷物を送った場合、届くのは翌々日の朝で、Amazon等の通販サイトでも1日以上はかかります。荷物の即日配送を求める方はしっかり把握しておきましょう。
雪が積もって交通が不便になることがある
札幌は冬になると積雪のために交通が不便になることがあります。12〜3月は積雪が70cmを超える日も多いため、歩くのも大変です。場合によっては鉄道が運休することもあります。
また、自動車で移動する場合には、路面凍結によるスリップや吹雪による視界不良などが起こる可能性があります。冬は繁華街に出かけたり道内の観光地を訪れたりするのは、少し難しいかもしれません。
おすすめの移住先
札幌にも様々な地域がありますが、移住にはどの地域が向いているのでしょうか。札幌市内のおすすめ移住スポットを3つ紹介します。
①都会的な生活が味わえる「札幌駅周辺」
札幌の中でも札幌駅周辺は特に栄えており、都会的な生活が送れます。
病院やスーパーなどの生活に必要な施設に加え、ショッピングモールなどの娯楽施設が充実しており、生活に困ることはありません。また、大通やすすきのと言った繁華街が徒歩20分圏内にあり、ビジネス街や行政施設へのアクセスも便利です。
様々な施設がそろう都会的な地域でありながら、北海道大学のイチョウ並木や大通公園など、緑を感じられる場所があるのも魅力です。
都会の便利さを感じながら、落ち着いた自然を味わいたい方には札幌駅周辺はとてもおすすめです。
②自然が多く住みやすい「円山公園」
札幌でも住宅街として人気が高い地域が円山公園周辺です。中でも市営地下鉄円山公園駅周辺は札幌市内でも有数の高級住宅街として知られています。
人気の秘訣は自然溢れた環境です。円山公園の原生林はハイキングスポットとしても人気で、春にはきれいな桜を見ることができます。
教育環境も整っており、教育に力を入れている進学校が多く集まっています。自然豊かで教育環境が整っているため、子育てには最適な地域だと言えます。
③落ち着いた環境ながら便利な「琴似」
近年人気が出ているエリアが琴似です。交通網が整っており、JR・地下鉄・バスが全て利用できるため、道内をスムーズに移動できます。
ショッピングモールが数多くあり、飲食店や商店街も充実しているため、買い物も娯楽も琴似のエリア内で完結できます。生活に困らない街でありながら、中心街からは少し離れているため、都会の騒々しさを感じずに過ごせるのも特徴です。
生活の不自由なく、落ち着いた環境で暮らしたい方におすすめです。
札幌移住後の住環境
ここでは、札幌の住環境を物価・家賃と交通手段、自然環境と災害の3点から解説します。
札幌の物価と家賃相場
令和3年6月の北海道の消費者物価指数の総合は103.5で、全国平均の101.9と比べるとやや高めです。特に果物類は高いです。
ただし肉類は全体的に安く、水道代も全国平均よりやや安価に収まる傾向にあります。
肉類や水道だけでなく、札幌は家賃相場も安めです。例えば、札幌市西区では、ワンルームの賃貸物件の平均家賃が月3.6万円で、月5万円以上かかることも珍しくない東京や大阪に比べると安いと言えます。
人気エリアの円山公園駅でも全国平均程度であり、家賃のコストパフォーマンスは優れていると言えます。ただし、札幌駅周辺などの中心地区では、全国平均よりやや高めです。
参考:「北海道/総合政策部計画局統計課消費者物価指数(令和3年6月)」
参考:「SUUMO北海道版/北海道の家賃相場・賃料相場情報を探す」
札幌の交通手段
札幌の主な交通手段は鉄道とバス、高速道路です。市内にはJR北海道と市営地下鉄が通っており、JR北海道バスと北海道中央バスなどのバスも利用できるため便利です。
ただし、市外へ移動する場合は場所によって鉄道やバスがあまり通っていないエリアもあるため、高速道路での移動が必要になります。高速道路の交通量は少なく渋滞は稀ですが、利用者が少ない分、料金は高めに設定されています。
札幌の自然環境と災害
札幌は自然豊かで、市内でも円山公園や北海道大学など自然豊かなスポットが数多くあります。中心街からは外れますが、藻岩山にはスキー場が整備されており、自然の中で行うアクティビティも楽しめます。
自然災害についてですが、札幌では地震の危険性があります。今まで地震が起こった回数は他の地域に比べて少ないですが、市域周辺に巨大な活断層が発見されており、直下型地震が起こる可能性があると推定されています。地震のリスクはありますが、台風の通り道からは外れているため、突風による建物の損傷や怪我のリスクは低いです。
参考:「SAPPORO企業進出総合ナビ/札幌の魅力/低い自然災害リスク」
参考:「北海道大学大学院理学研究院附属/地震火山研究予測センター/質問と回答」
札幌移住後の仕事の実態
仕事の環境についても説明しておきます。ここでは雇用状況と平均所得について紹介します。
札幌の雇用状況
札幌の産業構造は製造などの第二次産業の割合が全国と比べて少なく、サービス業や飲食業等の第三次産業が多めになっています。また市内企業の90%が従業員数20名以下の中小企業です。
札幌の雇用状況は全国平均と比べると悪く、ハローワーク札幌での令和二年の有効求人倍率(1人あたり求人数)は0.73倍、札幌東、札幌北はそれぞれ0.73倍、0.87倍と、1人に1件の求人もない状況が続いています。
そのため、札幌市内の企業に就職するのは難しいかもしれません。
ただし、市内のIT企業数は増加しており、IT関連の業種であれば就職できる可能性は高まっています。また、リモートワークであれば転職せずに本州の本社に所属しながら働くことも可能です。
参考:「今後の札幌経済の発展に向けた方策について」
参考:「第3表 安定所別月間有効求人倍率の推移」
参考:「SAPPORO企業進出/IT・クリエイティブ産業 – ビジネス環境」
札幌の平均所得
札幌市民の平均所得は318万円で、全国平均の331万円と比べると少し低いです。
市内の産業がサービス業中心であること、中小企業が大半を占めることが原因であると考えられます。
参考:「北海道札幌市の平均年収・平均給与データ
2021年に公開された国の統計とハローワークの求人から見る北海道札幌市の年収・所得・給料事情
」
札幌の移住支援制度
最後に札幌の移住支援制度を紹介します。移住を検討している方は参考にしてください。
移住支援金
東京23区から札幌市に移住する人を対象に、最大60万円の支援金が支給されます。
支援金を受け取るためには、下記の条件を満たす必要があります。
・東京圏に通算5年以上在住していること
・東京圏に連続1年以上在住していること
・通算5年、連続1年以上23区内への通勤をしていること
参考:「札幌市/移住による就業者・起業創出事業(移住支援金)」
札幌のU・Iターン支援
札幌市はU・Iターンの支援も積極的に行っています。
JR東京駅近くには北海道へのUIターン就職希望者を対象に「札幌UIターン就職支援センター」が開設されており、札幌市内の企業の紹介や、応募書類の添削、面接支援等を受けることができます。
住まいに関する支援制度
札幌市は住まいに関する支援にも力を入れています。新築の住宅建造や既存住宅を改装する際に支援金が配布されます。
例えば、「札幌版次世代住宅補助制度」は札幌市が決めた一定以上の機能を持った高断熱・高気密住宅の新築費用の一部を補助する制度で、最高160万円の補助金が支給されます。
自然に囲まれた大都市、札幌への移住を検討しよう
リモートワークや支援制度が拡充されるとともに、移住先として注目されるようになった札幌。自然豊かで豊かな海産物を味わえるのに加えて、都市機能や交通網も整備されており、移住先としてはとても魅力的です。
一方、冬の寒さが厳しく求人数が少なく就職しづらいといったデメリットもあります。特に寒さは厳しいため、移住前に実際に体験してみることをおすすめします。札幌への移住を検討する人は、就職先を確保したうえで、現地を訪問して自分に合うかどうか確かめてみましょう。