東京の人口一極集中を解消し、日本全体の活力を上げることを目的とした地方創世に国や自治体が力を入れています。その一環として、地方移住者の金銭的支援に特化した「移住支援金制度」が設けられていますが、その内容を知っている人は少ないのではないでしょうか。
国からの支援だけではなく、自治体ごとに数多くの支援金制度が存在し、内容や条件は大きく異なります。この記事では、移住支援金について理解できるよう、移住支援金の種類や内容、利用する際の注意点について解説します。
移住支援金制度とは?
移住支援金制度は、移住者に対して金銭を支給する制度です。
主に国や地方自治体が実施しており、地方で起業する際の金銭的援助や教育費の補助など、様々な種類の制度があります。誰でも利用できるわけではなく、年齢や移住先などの条件が指定されているのが一般的です。また、同じような支援金制度でも、移住先の自治体によって金銭の支給額や条件が異なります。
国の移住支援金
まずは国の移住支援金について詳しく見ていきましょう。
大きく分けて3つの支援金制度を設けています。
- 移住支援金
- 企業支援金
- グリーンポイント支給制度
それぞれ詳しく解説します。
移住支援金
移住支援金は、東京圏外へ移住する際に支給される支援金です。通算5年以上東京23区に住在、または通勤していた人を対象に、東京圏外で起業や就業することを条件に、最大100万円(単身者は最大60万円)が支給されます。支給金額は一律ではなく、移住先の都道府県によって異なります。
また、下記の地域の人が東京圏外に移住しても移住支援金の対象外になります。
東京都 | 檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村 |
埼玉県 | 秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町 |
千葉県 | 館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、東庄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町 |
神奈川県 | 山北町、真鶴町、清川村 |
参考:移住支援金
起業支援金
起業支援金は、東京県外へ移住し、移住先の地域活性化につながる事業を始める人に対して、最大200万円を支給する制度です。地域産品を活用する飲食店や高齢者が買い物しやすいバリアフリーの店、子育てに関する事業など、地域の活性化に貢献する事業であれば、幅広い分野が対象となります。企業支援金を利用するには、下記の条件を全て満たすことが必要です。
- 1.東京圏以外の道府県で社会的事業の起業を行うこと
- 2.公募開始日以降、補助事業期間完了日までに個人開業届または法人の設立をすること
- 3.起業地の都道府県内に住んでいること(移住予定も可)
参考:起業支援金
グリーン住宅ポイント制度
グリーン住宅ポイント制度は、省エネ性能を備えた住宅を取得する人にポイントを支給する制度です。支給されたポイントは、グリーン住宅ポイントのWebサイトで家電やインテリア、食料品などと交換できます。新築や中古住宅を購入する人を対象に、最大40万ポイントが支給され、東京圏外へ移住する人には15万〜60万ポイントが加算されます。
ただし、リフォーム工事と賃貸住宅の建築は、ポイント加算の対象外です。
自治体の移住支援金
自治体の移住支援金は、各都道府県の市町村が移住者に対して金銭を支給する制度です。住宅購入時に支給される支援金や子供の人数に応じて支給される支援金など幅広い支援金があり、移住先の地域によって支給金額や条件が異なります。ここでは、地方自治体の移住支援金について詳しく解説します。
新築住宅取得の支援金
新築住宅取得の支援金は、指定の地域に住宅を建て居住することで支給される補助金です。自治体によっては100万円以上を支給することもあり、新築住宅を建築する費用を削減するのに役立ちます。ただし、一定の期間住むことが条件に定められている場合が多く、他の地域に引っ越しづらくなるデメリットもあります。
北海道上川町のケース
北海道上川町では、子育て世帯を中心とした移住を推進する目的で、町内で新築住宅を取得した人に補助金を支給しています。新築住宅金額の5%の金額を上限に、最大100万円までを町が補助します。また、下記の条件のどれか1つを満たした場合には、最大50万円が加算されます。
- 高校生以下の子供がいる
- 過去5年以上本町に住んでいた人が、上川町にUターン転入し、1年以内に新築住宅を取得
- すでに町内の賃貸物件等に1年以上居住している人が新築住宅を取得
- 町内事業者が新築住宅を取得
奨学金の支援金
奨学金の支援金は、借りた奨学金の返還を補助する制度です。特定の地域に住むことが条件に定められている場合が多く、若者を対象としている場合には年齢制限が設けられていることもあります。
静岡県湖西市のケース
静岡県湖西市では、市が指定する企業に就職した人を対象に、奨学金の返還を最大54万円まで補助しています。奨学金返済開始月から36ヶ月間、毎月1万5000円が支給され、指定の中小企業に正規雇用された場合には、最大で18万円(36ヶ月間、毎月5000円)が追加で支給されます。
子育ての支援金
子育ての支援金は、子供がいる家庭を対象に支給される支援金です。教育費の補助や出産の祝い金など、自治体によって支援内容が異なります。
京都府南丹市のケース
京都府南丹市では、子どもの出産人数に合わせて祝金を支給しています。第1子は5万円、第2子は10万円で、第3子以降は20万円が支給されます。無条件で祝金を受け取れるわけではなく、出生時に南丹市に住所を有していることが条件です。
参考:子宝祝金
移住支援金
移住支援金は、特定の地域に移住した人に対して金銭を支給する制度です。移住先での定住や指定された企業への就職が条件に定められていることがありますが、受け取れる額が大きいのが特徴です。場合によっては100万円以上が支給されることもあります。
鹿児島県鹿児島市のケース
東京23区に在住もしくは23区に通勤していた人が、鹿児島市へ移住した人を対象に、最大100万円を支給する制度です。鹿児島市内で就業することが条件に定められていますが、テレワークを行う人も支援金の支給対象になります。支援金の受給には条件が定められており、下記の条件を全て満たす必要があります。
- 移住直前の10年間のうち通算5年以上、東京23区に在住していた人、または東京圏から23区に通勤していた人
- 就業の場合は鹿児島県のマッチングサイトに掲載されている対象求人に応募し新規で就業した人
- 起業の場合は鹿児島県が実施する起業支援事業に係る起業支援金の交付決定を受けた人
- テレワークの場合は所属先企業からの命令でなく、自己の意思により移住し、移住元での業務をテレワークにて引き続き行う人
移住支援金を利用する際の注意点
移住支援金制度は実施する自治体によって適用条件や申請方法が異なります。支援金制度をスムーズに利用できるよう、ここでは、移住支援金を利用する際の注意点を解説します。
条件を満たしているか
まずは条件を満たしているか確認しましょう。移住支援金には様々な種類の支援金があり、利用する支援金によって受給の条件が異なります。条件を満たさない場合、支援金を受け取れない可能性があるので、国や自治体のホームページや窓口で事前に確認しておきましょう。
特に、申請期限や予算の上限など、支援金の受給に大きく関わる条件には注意しましょう。
申請方法が合っているか
支援金は条件を満たしていても、申請方法が間違っていると受け取れない可能性があります。多くの場合は自治体の窓口に書類を提出することで支援金制度を利用できますが、自治体によって必要書類が異なるケースが多いです。
事前に必要な書類が揃っていることを確認してから提出するようにしましょう。
移住支援金を利用して費用を削減しよう
国や自治体の移住支援金制度を利用することで、費用を軽減できるため、浮いたお金で新しい家電や家具を購入したり、趣味に回したりできます。
支援金には様々な種類があり、中には100万円以上を支給する制度もあるので、申請期限や条件を満たしているか、事前に確認して、後悔しないようにしましょう。