移住コラム

「消滅可能性自治体」とは?ピンチはチャンス!?失敗しない移住先選びで絶対に知っておくべき意味や問題点を徹底解説!

ピンチはチャンス!?

あなたは、「消滅可能性自治体」をご存じでしょうか?文字だけでみると「消滅」という言葉が入っているため、かなりセンセーショナルに捉えられがちで、文字通り「町が消えてなくなる」という印象を与えかねません。もし、現在検討している移住先が、実は消滅可能性自治体だったとしたら、不安に感じる方が少なからずいることでしょう。

しかし、近い将来、実際に町が消滅するという意味ではなく、人口動態によって機械的に算出されたものであることに注意が必要です。したがって、現段階で過剰に恐れる必要はないものの、今後地方移住を考える際に、「消滅可能性自治体」という言葉を正しく理解しておく必要があるといえるでしょう。

今回は、今だからこそ知っておきたい「消滅可能性自治体」を、どこよりもわかりやすく解説します!

そもそも、消滅可能性自治体とは?どのような問題点があるのか?さらに、消滅可能性自治体に指定された町がV字回復することは可能なのか?など、多角的な内容です!

日本の人口は2008年にピークを迎え、2011年以降減りつづけていることは広く知られています。人口減少とともに東京一極集中が進むにつれ、地方を中心にその流れが加速しているのが現状です。ぜひあなたも、「消滅可能性自治体」を正しく理解したうえで、素敵な移住を実現させましょう!

消滅可能性自治体とは

棚田の様子

まずは、「消滅可能性自治体」とはいったい何か?を解説します。

「消滅可能性自治体」は、2014年5月に有識者グループ「日本創成会議」によって発表された論文に端を発するもので、当初は「消滅可能性都市」と呼ばれていました。出産可能と定義づけられた、20~39歳の「若年女性人口」が減少するかぎり出生数自体も低下することから、各自治体における若年女性人口の将来動向を分析し、持続可能かどうかを調査したものです。

2014年に発表された論文から丸10年を経て、今回あらたに民間有識者グループ「人口戦略会議」が第2弾として2024年4月に発表し、「消滅可能性自治体」という名称に改められました。

今回の発表においては、全国1729自治体の持続可能性を分析するうえで、2020年~2050年までの30年間における若年女性人口の動向をもとに分類を見直し、以下4つのカテゴリーに分けられ、より鮮明に各自治体の将来像が浮かび上がったものとなります。

分類 自治体数 定義 自治体例
自立持続可能性自治体 65 20~39歳の若年女性人口の自然減・社会減の影響が抑えられている自治体 千葉県流山市、静岡県長泉町、沖縄県宜野湾市 など
ブラックホール型自治体 25 人口の増加分を他地域からの人口流入に依存しており、当該地域の出生率が非常に低い自治体 千葉県浦安市、東京都新宿区・渋谷区・品川区、京都市 など
消滅可能性自治体 744 20~39歳の若年女性人口における減少率が大きい自治体 北海道函館市、茨城県日立市、大阪府門真市、鹿児島県南九州市 など
その他 895 上記の分類にあたらない自治体 札幌市、和歌山市、北九州市 など

【自立持続可能性自治体】

移動仮定(人口流入・流出が一定程度つづくと仮定した推計)および、封鎖人口(人口流入・流出が一切なく出生と死亡だけで人口が変化すると仮定した推計)の両方において若年女性の減少率が20%未満の自治体

【ブラックホール型自治体】

移動仮定による若年女性人口の減少率が50%未満である一方、人口増加分を他地域からの流入に依存しており、当該地域の出生数が非常に低い自治体。おもに東京23区や大阪市などの大都市が該当。

【消滅可能性自治体】

若年女性人口が50%以上減少する自治体。

【その他】

上記の分類にあたらない自治体。ただし、ほとんどで若年女性人口が減少する見込みであることから、減少状況によってそれぞれの自治体で対策が必要。

ざっくりとまとめると、2020年~2050年までの30年間で、

  • 自立持続可能性自治体:若年女性人口の減少がゆるやか、または増加する自治体。
  • ブラックホール型自治体:若年女性人口の減少がゆるやかまたは増加するが、生まれてくる子どもが非常に少ない自治体。
  • 消滅可能性自治体:若年女性人口が2020年と比較して半分以下になる自治体。
  • その他:上記以外の自治体。

となります。

第2弾となる今回の分析の結果、消滅可能性自治体に指定されたのは全国1729自治体のうち744自治体とされ、前回2014年の896自治体よりも改善したことは喜ばしいことかもしれません。「消滅」という言葉のインパクトが独り歩きしたことにより各地で波紋を呼ぶ結果となりましたが、人口減への危機感をもってほしいという思いもあり、あえてこのような言葉をえらんだようです。

また、これら2度におよぶ調査・分析の結果、各自治体が人口減少への危機感をあらたにしたことや、国の政策である地方創生も手伝って、各自治体による移住支援を拡充させる動きが活発となり、コロナ禍を経て現在の地方移住ブームへとつながりました。地方を中心とした各自治体が移住者獲得に力を入れることにより、東京や大阪などの大都会で暮らす人々が、よりよい暮らしを求めて地方移住しやすくなったことは、予期せぬメリットといえるかもしれません。

人口減少がつづく日本において、この「消滅可能性自治体」という言葉は、今後ますます注目されていくことが予想されます。移住を検討する際の1つの指標として、正しく理解することがとても重要なことといえるでしょう。下記のリンク先から、全国の各自治体が消滅可能性自治体かどうかを確認できます。興味のある移住先がどのカテゴリーに分類されているか、気になる方はぜひ一度チェックしてみてください。

参考:「消滅可能性自治体」マップと一覧(朝日新聞デジタル)

消滅可能性自治体の問題点

問題点

ここからは、消滅可能性自治体の問題点について3つ解説していきます!消滅可能性自治体に指定されることで、どのような問題が懸念されるのでしょうか?ただ、あくまで「仮定」の話であることに留意していただき、今後の移住計画の参考にしてください!

行政サービスの低下

まず、第1に懸念されるのが行政サービスの低下です。人口減少が進むことで税収が減り、行政サービスを維持していくことが難しくなります。町の上下水道・ごみ処理・バスなどの公共交通機関、または、図書館や公民館などの公共施設は、おもに税金によって成り立っています。これは、出産・育児・介護などの福祉にまつわる補助制度も同様です。

人口減少によって税収が減ると、優先順位が低いものから否応なしに「コストカット」がおこなわれます。地方にある小さな図書館や公民館などが閉鎖されるといったニュースを、あなたも耳にしたことがあるかもしれません。もちろん、民間への業務委託などにより施設が維持されることもあるため一概にはいえないものの、消滅可能性自治体では、今後、行政サービスの低下が懸念されることは理解しておきましょう。

経済活動の停滞

経済活動の停滞も深刻な問題です。おもに若年層の人口減少によって労働力が不足することで産業が空洞化し、「地元から仕事やお店がなくなる」懸念があります。生産と消費のサイクルが回らなくなることで、よりいっそうの経済活動停滞の悪循環に悩まされる自治体も多く、対策に追われているのが現状です。

そのため、各自治体ではさまざまな「町おこし」を通じて、少しでも経済活動を維持・向上させる取り組みがおこなわれています。経済活動の停滞という深刻な問題はあるものの、移住先をえらぶ際は、それらの「町おこし」に着目し、チェックしてみるのもいいかもしれませんね。

コミュニティの崩壊

人口減少による地域コミュニティの崩壊も、消滅可能性自治体を考えるうえで重要な問題点といえます。人口減少や過疎化によって地域住民が減ることで、人とのつながり自体が希薄になり、何かしらのトラブルや災害時など、地域間で円滑な助け合いができにくくなるのは大きな問題です。また、地域コミュニティの崩壊は、非常時だけでなく日常生活においてもさまざまな面で不便が生じます。

もちろん、現段階で過度に恐れる必要はありませんが、将来に備えて意識的に円滑なコミュニケーションを取る姿勢が求められるでしょう。

消滅可能性自治体は移住により持続可能性を高めることができる

風力発電の様子

ここまでネガティブな話題がつづきましたが、消滅可能性自治体は移住によって持続可能性を高めることができ、実際にいくつもの自治体が脱却に成功しています。その代表的な成功例として、鳥取県琴浦町のケースをみてみましょう。

日本海と西日本屈指の名峰・大山を有するのどかな田舎町である鳥取県琴浦町は、2014年の前回調査において消滅可能性自治体(当時は消滅可能性都市)に指定されたものの、以後は移住者獲得に力を入れ、今回の調査では見事脱却に成功しました。

官民が連携して町の魅力を外部に発信するプロモーションイベントを積極的におこない、「移住者ウェルカム」の雰囲気を醸成しつつ、移住者へ向けて充実した補助金・支援金を支給しています。新築住宅の購入で最大200万円の奨励金や、空家の購入・賃貸に対する最大100万円の補助金などがその代表例です。

これらの取り組みによって順調に移住者が増え、持続可能性を高められただけでなく、宝島社発行の月刊誌『田舎暮らしの本』、「住みたい田舎ベストランキング」において2023年・2024年の2年連続全国1位を獲得した注目の移住先となりました。

おもしろいことに、全国各地にまたがるこの消滅可能性自治体をチャンスと捉え、現地へ移住して起業する若者が増えています。消滅可能性自治体からの脱却を目指し官民と連携を取りやすく、地域社会やコミュニティを巻き込んで応援してくれるという背景もあり、ぞくぞくと都市部から起業を目指し移住が加速しているのです。

まさに「ピンチはチャンス」といえ、ある意味で消滅可能性自治体はフロンティアと呼べるのかもしれません。暗い話題が先行しがちな消滅可能性自治体ですが、移住によって持続可能性を高められ、さらには多くのチャンスもあることは、ぜひ知っていただきたい真実といえるでしょう。

参考:【鳥取県】琴浦町へ移住しよう!「住みたい田舎ベストランキング」2年連続全国3冠の必見の移住先!

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スマホを持った男性

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参考:何でも聞ける、移住の相談窓口「スタイルチャット」

消滅可能性自治体への移住を検討しよう

手をつなぐ親子

「消滅可能性自治体」は、人口減少が進む日本において避けては通れないものです。「消滅」というセンセーショナルな言葉から各地で波紋を呼んだものの、現実に目を背けるのではなく「立ち向かう」姿勢が重要で、各自治体ではそれらの脱却に大いに取り組んでいます。実際に2014年調査よりも改善が進んだことは、とても喜ばしいことといえるでしょう。

さらに、この消滅可能性自治体をチャンスと捉え起業する若者も増えており、地域住民と移住者が一致団結して町おこしに励む様子は、とても充実した移住生活といえるかもしれません。実際に、町おこしをはじめとする各種取り組みによって活気がよみがえり、全国的に注目を浴びる自治体も数多く存在するのです。

正しい理解と知識を得て、消滅可能性自治体への移住も視野に入れておくことは、人生を充実させる大きなチャレンジといえるかもしれませんね。

※内容は2024年6月執筆時のものです。

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