移住を考えるとき、自然がある、食が豊か、子育てしたい環境などの理由で地域を決めることが多いでしょう。そして移住に際してまずなくてはならないのが、住居です。
せっかく移住をするなら、都心より低価格で土地が購入できるため、お気に入りの土地を見つけて好きな間取りやデザインの家を建てたいと考える人もいるのではないでしょうか。
本記事では、移住先での土地の探し方、土地購入の流れ、地方ならではの土地購入の際の注意点について解説します。移住先での土地購入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
移住先の土地の探し方
移住先で土地を購入するにも、まずは購入したい土地を探さなくてはなりません。ここでは土地の探し方について説明します。
移住の目的を確認する
まずは移住する目的の確認が必要です。海の近くで生活したい、家庭菜園をしたい、林業や漁業など新しい職種に挑戦したいなど、移住する目的によって探す場所が異なります。子育て環境を考えた場合は学校や病院などへの便がいいことも必要でしょう。
自然を満喫するために移住はしたいけれど、日常生活の利便性を確保したい場合は、市街地に近い場所を居住先として考える必要があるでしょう。まずは移住する目的の確認が大切です。
移住先の地域や土地の広さを決める
移住の目的が確認できたら、その目的にあう地域を探しましょう。
同じ県内でも地域が異なると環境が大きく変わります。そのため移住先は都道府県という大きなくくりから、移住の目的に合わせて地域まで絞っていくことが必要になります。地域が絞れたら、どれくらいの広さの土地を購入したいかというおおよその規模感をもっておくと良いでしょう。
土地の相場を調べ、予算を考える
移住したい地域、希望するおおよその土地の広さが決まったら、さらに具体的にするために、予算を考えていきましょう。
ここで注意が必要なのは、土地を購入しただけでは居住はできないということです。予算には家を建てる費用もあることを忘れてはいけません。家を建てる費用を考えたうえで、土地購入の予算を決めていきましょう。
この際、各地域の地価については国土交通省が運営しているサイト土地総合情報システムで、調べられるので予算を考えるときの参考にしてみてください。
探し方を決める
今はネットが発達しているため自分でも土地探しを行うことが可能です。どうしても自分でこだわりの土地を見つけたい場合は、自分で調べてみるのもいいかもしれません。他にも、不動産会社に条件を伝えて探してもらうという方法もあります。
どの方法をとる場合でも、こだわりすぎると土地がなかなか見つけられないので注意が必要です。こだわりの土地を探すことを優先しすぎて、年月が流れてしまい、移住するタイミングを逃すことにならないようにしましょう。
土地購入の流れとポイント
購入したい土地が見つかったら、次は購入です。ここでは購入の流れとポイントについて説明します。
買付証明書の提出
購入したい土地が見つかったら、「購入したい」という意思表示を行う必要があります。これが「買付証明書」の提出です。買付証明書には購入申込書、買付申請書等が含まれ、書面で売主または不動産仲介業者に提出します。買付証明書には、購入希望金額や契約、引き渡しの時期などを記入します。
買付証明書は正式な売買契約ではなく、あくまで売主に対して「この土地を購入したい」と意思表示を行う書類のため、提出後にキャンセルすることが可能です。希望した土地に複数の人から買付証明書が提出される場合は購入希望金額や住宅ローンの事前審査が終わっているなど、売主にとって条件のいい人と優先的に交渉が始まるケースもあるので、買付証明書提出の際に気にしておいたほうがいいポイントです。
住宅ローンの事前審査
買付証明書を提出したら住宅ローンの事前審査を受けることが必要です。事前審査とは、銀行がいくらまでお金を貸してくれるか事前に確かめることです。事前審査には、一般的に2~4日程かかります。借り入れられる金額がわからないと土地を購入できるか不確かなため非常に重要です。
先ほども説明したように希望の土地に複数人から買付証明書が提出されていた場合は、事前審査が通っていた方が有利になることもあるので、事前審査を早くしておきましょう。
事前審査は複数の金融機関へ依頼することが可能です。同時に複数の金融機関へ依頼することにより、より条件の良い住宅ローンを借りることができます。このように事前審査を早く行うこと、複数の金融機関に依頼することが事前審査のポイントです。
重要事項説明
次に重要事項説明です。重要事項説明とは契約前に宅地建物取引業者が不動産の重要な事項について書面を交付のうえ説明を行うことです。これは法律上義務付けられています。
この書面のことを「重要事項説明書」と言います。重要事項説明書には不動産や法律の専門用語が並ぶためその場での理解が難しいでしょう。事前にコピーを受け取るなどして細かいところまで確認することがポイントです。
土地購入に対しての最終意思決定になるため、時間を取ってしっかりと確認しましょう。そうすることにより説明時には不明な点を質問できるので、納得したうえで契約を結ぶことができます。
土地売買契約
重要事項説明書に記名・捺印したら、いよいよ土地売買契約になります。
土地売買契約にあたっては手付金が必要となります。不動産会社が土地の売主である場合は上限が20%と決められていますが、一般的には土地価格の5~10%程度が相場です。
土地契約でのポイントは「買付証明書提出から契約までは1週間~10日」しか時間が無いということです。そのため、住宅ローン事前審査など必要な手続きを進めておくことが必要です。
住宅ローン本審査
正式に売買契約が締結したら、住宅ローンの本番審査に進みます。事前審査の時は複数の金融機関に審査を依頼していましたが、本審査では1つの金融機関に絞ります。本審査で確認される項目は申込者本人の収入を証明する書類に加え、不動産売買契約書、登記事項証明書など購入する予定の不動産に関する書類も必要です。
審査期間は金融機関の本店で行われ1~2週間程度かかること、審査の途中で追加資料の提出を求められた場合は、さらに期間が延びて3週間程度かかるケースもあります。
事前審査に通っていれば条件の変更がない限り基本的には本番審査も通りますが、条件の変更があったり、きちんと書類がそろっていなかったりすると、事前審査に通っていても本審査で落ちることがあるので、審査に必要なものなどを金融機関に確認し準備を整えてから本番審査に臨むことがポイントです。
金銭消費貸借契約
本番審査を通過したら、ローンを組む際の正式な契約書にあたる金銭消費貸借契約書を締結します。
金銭消費貸借契約とは、金融機関と住宅ローンの借主が、借入金額、返済年数、借入条件(金利・担保等)を約定するために交わす契約のことです。省略して「金消契約」とも呼ばれます。住宅ローンの申し込みは本審査の申し込みに過ぎないため、正式にお金を借りるにはこの金消契約が必要です。
ここでのポイントは金消契約で融資の実行となりますが、融資金額がいつ振り込まれるかは契約する金融機関によって異なるため金融機関に確認しておくことが大切です。
土地の引き渡し・所有権移転登記
いよいよ土地の引き渡しです。
融資が受けられたら、売主にすでに支払っている手付金を差し引いた残額を支払います。事前に金融機関に依頼しておけば、自分の口座を通さず、直接売主の口座に振り込んでもらうことも可能です。売主が入金を確認して問題がなければ土地の引き渡しと進み、所有権も移転します。所有権移転の手続きは司法書士に対応してもらえます。司法書士への報酬支払いは数万~5万円が相場です。
また土地購入には税金もかかります。税金は印紙税、登録免許税、不動産所得税の3つです。印紙税は土地の売買契約や、金消契約を結ぶ際に発生するもので、例えば1千万円を超え5千万円以下の場合は2万円、5千万円を超え1億円以下の場合は6万円などとなっています。登録免許税は、取得した土地の登記をする際にかかる税金です。金額は、「登録免許税額=土地の費用(課税標準) × 2%(標準税率)」で計算されます。不動産取得税は、土地の取得に対してかかる税金です。金額は「不動産取得税=取得した土地の費用(課税標準)× 2分の1× 3% − 控除額」で計算されます。
引き渡しについてのポイントは、土地売買契約から引き渡しまでは住宅ローンの申し込み状況や、引き渡しされる土地の条件によって、通常1~2カ月かかることを知っておくといいでしょう。
移住先で土地購入で注意すべき点
ここでは、移住先、特に田舎暮らしを希望する人が知っておきたい、土地購入で注意すべき点について説明します。
地方物件の特徴
都会のきっちりとした、細かい契約とは異なり、田舎の物件はあいまいでおおまかなところがあり法規制が緩い場合もあることが特徴です。規制が緩いため比較的自由な契約ができるという利点がありますが、あいまいな契約をしてしまったために後々トラブルに発展する可能性もありますので注意が必要です。
自分自身でも、上述した土地購入の流れ、法律や取引等ある程度の知識を身に着けておくといいでしょう。
地域ごとで異なる特徴
田舎は都会に比べ、広大な地域を少ない人口や税収で支えていく必要があります。そのため地域によっては行政だけでは対応できず、水路や農道の維持管理費・消防団の結成など住民が主体となっての活動が必要になり、費用の負担や活動への参加を求められるというケースも少なくありません。
もちろんすべてに参加する必要はありませんが、どの程度を求められるのかについてはあらかじめ確認しておくことをおすすめします。田舎では上手に人間関係を築いていくことが重要となります。
境界
田舎物件で一番注意しなくてはならないのが境界の問題です。田舎では境界があいまいなために境界問題が起きる可能性が高いです。行政による国土調査が進み境界線が確定されているのが一般的ですが、田舎の物件では境界線が確定していないことも多いので注意が必要です。
相続している土地など昔から親戚間で暮らしている場合には、境界線の取り決め自体をしていなかったり、山林などでは立木の種類が境界になっていたりと境界があいまいなことをまず理解しておきましょう。後々トラブルを起こさないためには、境界が確定している土地を購入する、または専門家へ測量図の作成を依頼することが必要でしょう。
都市計画
都市計画とは、都市の将来あるべき姿を想定しそのために必要な規制、整備等を行い、都市を適正に発展させようとする方法のことです。田舎は「都市計画区域外」に該当する場合があり、その場合は住宅ローンの審査が厳しくなることがあります。
また「市街化調整区域」に指定されている場合は市街化を抑制すべき区域として、建築物の建設や増築に規制が掛かる場合があります。そのため購入しようとている土地が都市計画のどの区域に該当するのかを事前に確認することが必要です。
飛び地
飛び地とは、土地が地続きではなく離れた場所に分割している土地のことです。
家が建ってる土地以外に、道路や他人の敷地を飛び越えて存在しています。そのため100坪と思って購入したら、60坪の土地と道路を飛び越えた別の敷地に40坪になっていたということがあります。田舎は飛び地である場合が多いため、土地の広さの数字だけでなく、所在地など詳細まで確認することが必要です。
農地
田舎暮らしの目的が家庭菜園であった場合、「畑や田んぼが付きます」と言われれば、興味がわくでしょう。
しかし、土地には“地目”という種類があり、農地法により、農地委員会で農地(地目が畑、田)と判定を受けている土地については、販売に農地委員会の許可が必要になるため、勝手に売買できません。農地の販売の場合、農地委員会の許可から所有権移転までにかなりの年月が必要です。田舎で土地を探す場合は土地の地目にも注意しましょう。
接道
接道は土地を選ぶ際に重要な問題ですが、特に田舎では気をつける必要があります。田舎は個人所有の私道が多いこと、道路に実質接道していない土地が多いことなどにより、自分の敷地内に入るために利用する道路が道路ではなく別の所有者の敷地である場合や、法律上定義される道ではない場合があるのです。そうならないようにするためには土地が道路に接道しているのか、通ってもいい道なのかなどの確認が必要です。
物件業者の選び方
土地探しを不動産会社に依頼する場合、どのような点に気をつければいいのでしょうか。
不動産会社には地元の不動産会社と広域を扱っている不動産会社があります。広域を扱っている不動産会社は持っている案件も多いので幅広く案件を紹介してくれることに加え、地域ごとの特徴を含めた幅広い視点でサポートしてくれます。地元の不動産会社はその地域の案件のみを扱っているため案件は少ないかもしれませんが、その地域に特化しているだけに地域の情報にも詳しく、移住後も相談に乗ってくれるかもしれません。
このように双方に利点があるのでどちらがいいとは言えませんが、移住先が特定できていて地域の情報を知りたい、地域を絞り込むためのサポートがほしいというような依頼時の状況や、電話やメールなどで相談をした時に親身になって対応してくれる、物件の案内も事実をきちんと伝えてくれることなどを考え不動産会社を選ぶことが大切でしょう。
移住先で見つけた土地でこだわりの新生活を実現しよう
土地購入の流れや移住先で土地購入をする時の注意点がたくさんあり、土地を購入するのは大変と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、田舎は近所付き合いが盛んで地域のみんなが協力して形成されているので、田舎のコミュニティに参加する楽しさがあります。注意点を押さえながら移住先で希望の土地を見つけ、移住先ならではのこだわりの新生活を実現しましょう。