テレワークやリモートワークを採用する企業が増えているため、住宅費用がかかる都会から地方への移住を検討している人が増えています。移住に伴い、土地を購入して新築したり中古物件を購入する際に必要となるのが、土地や建物の登記手続きです。
そこで、この記事では移住前に知っておくべき登記に関する基礎知識や手続き方法・費用について詳しく解説していきます。
不動産登記とは?
不動産登記とは、土地や建物などの不動産の場所や広さ、所有者が誰なのかなどの情報を法務局で管理していることをいいます。不動産登記をすることで不動産の売買などの取引を安全に行うことができます。土地権利の関係性や土地の状況などが誰でもわかるように一般公開されています。
登記事項証明書に記載されていること
登記された情報は、法務局のコンピュータに記録されています。その記録内容を紙に印刷したものを「登記事項証明書」といい、以下の情報が記されています。
- 土地や建物の所在
- 土地の面積
- 所有者の住所、氏名
- 所有者に関する情報(いつ、どんな原因で所有権を取得したなど)
- 抵当権、所有権以外の権利に関する情報(抵当権設定、地上権設定、地役権設定など)
移住先で登記が必要になるケース
登記と聞くと、新築の建築や家の売却などが思い浮かぶため地方への移住を考えた場合に必要ではないと思われがちです。しかし、移住先で新築・中古住宅を購入した場合登記が必要になります。
移住先で土地や住宅を購入した時
移住先で土地や住宅を購入した場合、不動産登記が必要です。登記をすることで不動産が自分のものであることの証明になります。新築した場合、まずは建物の場所や大きさなどを記録する「建物表題登記」を行います。建物表題登記が完了すると次に所有者や権利に関する「所有権保存登記」を行います。
移住前の家を売却した時
移住前の家を売却した場合、所有権移転の登記手続きが必要になります。買主と売主が共同で行います。この「所有権移転登記」は、所有権を得たあと1か月以内に行わなければなりません。
引っ越しや氏名変更した時
登記簿に記載している住所は引っ越しをすると自分で変更の登記申請をしなければなりません。自動的に変更されないため住所が変わるたびに住所変更登記を行わなければなりません。結婚などで氏名を変更した場合も変更手続きが必要になります。
不動産登記申請の方法
不動産登記の申請は専門用語が多く、事前準備に手間や時間がかかります。そこで自分で行うよりも費用がかかっても専門家に依頼することがほとんどです。
司法書士に依頼
司法書士は法律の専門家で登記の「権利部」部分の登記の申請手続きを代理で行います。権利部とは登記の中の所有権や抵当権、借地権、地上権など権利に関する情報のことです。また登記以外の法律にも詳しいため、登記にかかわるトラブルの際にも頼りになります。
土地家屋調査士に依頼
土地家屋調査士は不動産の調査が専門になります。不動産登記の「表題部分」である不動産の所在や地番、地目や地積、床面積などの申請手続きを代理で行ってくれます。
自分で申請する
なるべく費用を抑えたい人は、自分で申請することもできます。必要書類を揃えて、不動産登記の申請書に必要事項を記入したら法務局に提出して問題がなければ登録が完了すると登記完了証と登記識別情報通知書を受け取り終了です。
ただし、不動産購入時にローンを組む場合は金融機関がトラブル回避のため司法書士による登記手続きを必須としているケースもあります。自分で申請したい場合は金融機関と相談しなければなりません。
また、建物新築時などで行う表題登記の場合は建物の図面や平面図が必要になるため、知識がない場合はハードルが高いでしょう。
登記にかかる費用の内訳
不動産の登記には種類があり、それぞれ費用が異なります。
登記にかかる費用の内訳
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
- 土地家屋調査への報酬
- 実費
土地の広さや価値、どの事務所に頼むかで費用は異なってきます。自分で手続きをする場合は司法書士や土地家屋調査士への報酬がありませんが、専門家に頼む人がほとんどです。
以下では、各費用について紹介します。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の購入や建築した場合に行う所有権保存登記や移転登記などにかかる税金になります。
税額の計算は課税標準に税率をかけた金額になります。新築か中古物、贈与や相続かによっても金額は変わってきます。
登録免許税=(標準価格(土地+建物))×税率
標準価格とは不動産価格のことで、固定資産税評価額になります。
税率
登記の種類 | 通常税率 | 特例 |
土地の売買 | 2.0% | 1.5% |
建物の新築 | 0.4% | 0.15% |
中古の建物 | 2.0% | 0.3% |
つまり、仮に土地2000万円の土地を購入した場合、2000万円×2.0%=40万円が登録免許税になります。
司法書士・土地家屋調査士への報酬
司法書士への報酬は、登記の種類などによって変わりますが大体10万円程度と見積っておくと良いです。
司法書士への報酬
複数の土地を1つにまとめて売却したい場合 | 数千円~10万円超 |
不動産を売買した場合 | 4万~9万円 |
住宅ローンを組む場合 | 3万~7万円 |
新築建築など | 2~5万円程 |
参考:報酬に関するアンケート
土地家屋調査士への報酬
建物表題登記 | 新築した場合 | 8万~10万円程 |
土地家屋調査士の報酬も10万円以内が相場です。
実費
実費の種類 | 費用の目安 |
登記事項証明書の交付 | 窓口交付 600円 オンライン 500円 最寄りの登記所、法務局証明サービスセンター 480円 |
不動産登記情報 | 全部事項 332円 所有者事項 142円 地図 362円 図面(土地所在地/地積測量図、地役権図面、建物図面/各階平面図)362円 |
登記利用(個人) | 300円 |
交通費 | 電車代 バス代など数百円~数千円ほど |
戸籍謄本などの交付 | 450~750円ほど |
実費を合わせると大体1~2万円ほどになることが多いようです。
土地の登記に関する注意点
土地の登記に関する注意点をまとめてみました。
購入の土地へ新築した場合、登記に期限がある
土地を購入し家を新築する場合は土地と建物の登記が必要になります。住宅ローンを組む場合はさらに抵当権設定登記も必要です。特に新築の場合は、表題登記が必要で、住宅を取得した日から1か月以内に申請しなければなりません。
準備する書類が多い
登記の種類にもよりますが登記には多くの書類が必要です。例えば、移住先で中古物件を購入した場合に発生する所有権移転登記には、以下のような書類が必要です。
不動産の売買(所有権移転)
- 買主
- 司法書士の委任状
- 住民票
- 資格証明書
- 売買契約書や領収書
- 売主
- 売買契約書や領収書
- 所有権登記済証
- 委任状
- 印鑑証明
- 固定資産税評価額
このように土地の登記には多くの書類が必要です。
意外に時間がかかる
土地の登記には書類を揃えたり、調べたり提出したりと意外に時間がかかります。少なくとも期日の1か月前には準備を始めることがおすすめです。
登記済証は紛失しても再発行できない
登録済証は権利証のことで、登記が完了したら登記所から買主の登録名義人が受け取ります。この登記済証は紛失しても再発行はできません。仮に紛失した場合は専門家に証明書を発行してもらい再度登記の手続きをすることになります。
まとめ
土地の登記には様々な種類があり、費用や必要書類などが異なります。移住先で不動産を購入したり、住んでいる家を売却、贈与などの場合には事前に登記の準備が必要になります。余裕をもって登記スケジュールを組んで移住先での新しい生活に備えましょう。