移住コラム

ワーケーションを移住のきっかけに。ワーケーションのメリットデメリットとおすすめエリア

新型コロナウイルスが蔓延する中、心身ともに健康に働ける制度として、「ワーケーション」に注目が集まっています。在宅勤務とは異なり、様々な場所で活用することで、より仕事や暮らしを充実させることができます。

この記事ではワーケーションに興味のある方に向けて、ワーケーションのメリット・デメリット、導入した企業や自治体の事例について解説します。

ワーケーションとは

ワーケーションとは「ワーク(work)」と「バケーション(vacation)」を合わせた言葉で、休暇中に一部の時間を仕事に充てる働き方のことです。ただ休暇中に働くのではなく、休暇中に訪れても仕事ができるように地方の環境を整え、働いた時間を勤務時間に勘定するという考え方です。

リモートワークは、自宅やコワーキングスペースなど会社が許可した場所での勤務に限定されるのに対して、ワーケーションは国内海外問わず、あらゆる場所での仕事が含まれます。新型コロナウイルスが流行する中、地方活性化にも繋がるため、新しい働き方として注目されています。

しかし、観光庁の調査”「新たな旅のスタイル」に関する従業員向けアンケート調査”によると、ワーケーションを体験した人は、全体の4.3%しかいないなど、日本では導入している企業はまだまだ少ないのが現状です。

参考:ワーケーションは従業員の生産性と心身の健康の向上に寄与する ~ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験を実施 | NTTデータ経営研究所

ワーケーションのメリット・デメリット

会社と従業員、それぞれの視点からワーケーションのメリットとデメリットを解説します。

会社にとってのメリット

就職市場での魅力度向上

ワーケーションは従業員にとって魅力的な制度です。導入すれば会社の人気は上がり、優秀な人材を集めやすくなります。まだまだ企業への浸透率は低いため、ワーケーションの導入は就職市場において他社との大きな差別化を図れるでしょう。

有休取得の促進

日本企業の有給取得率の低さは、「有給取得は他の社員に申し訳ない」という罪悪感が大きな原因です。ワーケーションを導入すれば、休みを取りながら仕事ができるため、罪悪感を持たずに有休を取れる環境が作れます

また、普段の職場と違う環境でリフレッシュすることで、仕事のパフォーマンス向上にも繋がります。

社員の生産性向上

ワーケーションの導入により、ワークライフバランスを実現しやすくなるため、社員のモチベーションが上がり、仕事の生産性が向上します。

ワーケーションは、日常業務とは違うコミュニケーションが自然に発生し、社員の相互理解が進みます。社員同士が仲良くなれば、コミュニケーションの活性化により、チームで行う仕事の質が高くなるでしょう。

会社にとってのデメリット

勤怠管理の複雑化

仕事をしながら休暇をとるため、業務時間の把握が難しくなります。また働いている場所が離れると、労災や通勤手当など労働管理について新しい規則が必要になってきます。

情報漏洩のリスク上昇

オフィス外の仕事は、会話内容の流出や、所持品の置き忘れ等で情報漏洩のリスクが高くなるため、個人情報の取り扱いやITセキュリティにはより慎重になる必要があります。改めて社員一人ひとりに教育を徹底しましょう。

運用コストの増加

社外で働くには、Zoom等のオンライン会議ツールや社外の人々の侵入を防ぐVPNなどが必要になり、これらの運用コストがかかります。

加えて、作業場所や宿泊施設の利用料も必要です。これらを会社が捻出しない場合、従業員の負担が大きくなり、ワーケーションの普及率も上がりません。できるだけ費用を抑えたい場合には、負担の内訳を従業員と相談する、地方自治体のワーケーション支援補助金を利用する等の工夫が必要です。

従業員にとってのメリット

ワークライフバランスの実現

ワーケーションの導入により好きな場所で過ごせるようになります。また有休も取得しやすくなり、プライベートでやりたいことに取り組みやすくなるでしょう。

仕事を終えた夜に地域の名産物を使ったディナーを楽しむ、都会から離れた観光地も休日に気軽に訪れられるなど、場所と時間の自由度の向上により、公私のバランスを維持しつつ、今までやれなかったことができるようになることがワーケーションの一番のメリットです。

生産性の向上

いつもの職場だとつい残業を重ねてしまい疲れを溜めてしまいますが、これまで行けなかった場所に行くことでリフレッシュできます。

自分のペースで働けるため、疲れも溜めにくく、仕事の生産性も上がります。生産性向上により業務時間が減ることで、公私ともにつぎ込める時間が増えるため、生活に余裕が持てます。

従業員にとってのデメリット

職場の緊張感がなくなるため、ONとOFFの切り替えが難しくなります。娯楽施設が近くにくるため仕事に集中できない、仕事に専念しすぎて休暇の時間が取れない等のケースが考えられるためです。ONとOFFのメリハリを意識するようにしましょう。

ワーケーションを導入した企業や自治体の事例

ワーケーションは企業だけでなく、地方創生を望む自治体も積極的に受け入れています。ここでは、企業と自治体のワーケーションの導入事例を説明します。

企業の導入事例

日本航空株式会社

日本航空株式会社(JAL)は、新型コロナウイルスが蔓延する以前から、有給取得率向上を目的にワーケーションを導入していました。

和歌山県白浜町では遠隔地のテレワーク体験や地域関係者との交流を図る機会、北海道ではビール醸造体験を設けるなど、会社が社員がワーケーションに踏み出せるように様々な支援体制を整えています。

結果、2020年時点で社員の1/4近くがワーケーションを利用しました。社員からも「ポジティブな気持ちを持てるようになった」と、好意的な声が上がっています。
出典:観光庁「導入企業事例/日本航空株式会社」

株式会社JTB

JTBは社員が休暇で訪れたハワイでテレワークを行う「ワーケーション・ハワイ」を導入しました。

ホノルル支店に設けられたワーケーションスペースはワイキキの海を一望できる爽快な空間で、「仕事が効率よく進んだ。」「普段と違うアイデアが浮かんだ。」など社員からも好評でした。

また、JTBは自社以外の企業にも、ワーケーションの浸透を進めています。企業と地域の共にメリットを得られるような関係を作りたいと、地方創生やワーケーション導入支援に取り組んでいることも特徴的です。

出典:JTB「海外でのテレワーク制度「ワーケーション・ハワイ」
を社内で導入し、働き方改革を推進します。」

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

ユニリーバ・ジャパンは自治体と連携して、社員が連携地域の施設を無料で使える「地域 de WAA」を導入しています。

業務外の時間、自治体の指定する地域課題解決に貢献すると、提携する宿泊施設の宿泊費が無料また割引になる取り組みが特徴。社員のウェルビーイングを上げるとともに、地域に根ざした新しいイノベーションの創出を目指しています。

出典:ユニリーバ「地域でWAA」

自治体の導入事例

北海道

北海道は広大な土地や豊かな自然環境や支援を活かして、幅広い企業と連携しながらワーケーションの普及を進めています。

道内の40もの市町村がワーケーションに取り組んでおり、仕事に専念しながら現地のグルメや散策を楽しめる「拠点型」、リモートワークに加え現地の仕事を体験できる「拠点型・周遊型」、アイヌなど現地の文化に触れる「周遊型」の、3つの5泊6日のリモートワークプランを令和二年度は実施。公私ともに満足できると好評でした。

出典:北海道「令和2年度 北海道型ワーケーション普及・展開事業」

長野県

長野県は軽井沢など首都圏からアクセスしやすいリゾート地で「信州リゾートテレワーク」事業を開始しました。

新幹線で東京から最短80分の好立地ながら、自然はもちろん、スキーや温泉街など仕事疲れをリフレッシュさせる様々なコンテンツが揃っており、何度訪れても飽きないスポットとして人気です。

出典:信州リゾートテレワーク「信州リゾートテレワークについて」

沖縄県

沖縄県も自然と観光資源の豊富さから人気が高く、自治体もAワーケーションに適した環境を整えてきました。花粉が少なく長期滞在に適しており、豊かな海や地元に根付いた琉球文化を楽しめるプランを複数提案しています。

出典:沖縄県「​​令和2年度沖縄ワーケーション促進事業報告書の掲載について」

ワーケーションに必要な環境やかかる費用


ワーケーションの導入に必要なツールを紹介します。

ワーケーションに必要な環境とツール

セキュリティソフト

全国のあらゆる地域でインターネット環境に繋ぐため、社内に比べてセキュリティ面でのリスクは高くなります。不正アクセスやウイルス対策にはセキュリティ対策ソフトは必須です。また、セキュリティソフトは頻繁にアップデートされるため、既にセキュリティ対策を入れている方も最新版にアップデートされているか確認しておきましょう。

VPN

VPNはオフィスから離れていても、第三者に侵入されずに安全な通信を確保する技術で、リモートワークで自社のセキュリティを守るには必須です。VPNは各社が提供してるサービスと契約することで使えるようになります。

チャット会議ツール

オンライン会議などのために、ZOOMなどのコミュニケーションツールが必要です。ZOOMやMicrosoft Teams、Google Meetなどが代表例で、有料プランと無料プランが用意されています。有料プランは無料プランに

  • 無料版には100人以下の招待しかできないが、有料版は数百人単位で招待可能(ただしMicrosoft Teamsは無料版でも300人まで招待可能)
  • 無料版には時間制限があるが、有料版は無制限で使える。
  • 有料版は会議の録画機能がある。

業務上数百人単位の会議、1時間以上の会議を行いたい方。会議を録画したい方は有料プランがオススメ、個人同士のコミュニケーション、短時間の会議で十分という方は無料プランでも問題ないでしょう。

ビジネスチャットツール

スムーズな情報伝達のために、ビジネスチャットツールは導入しておきましょう。ChatWorkやSlackは代表的なツールで、基本的な機能は無料で利用可能です。

勤怠管理ツール

働いている姿が見えないワーケーションでは、勤務時間を記録しておかなければなりません。勤怠管理ツールを使うことで、勤務時間や有給取得を一括で管理でき手間を減らせます。

ワーケーションにかかる費用

紹介したツールの中で、費用がかかるのはセキュリティソフトとVPNサーバー(オフィスの安全な通信を確保する技術)です。両方とも社員数によって料金は変わりますが、セキュリティソフトは1人あたり1年間2,000〜3,000円程度、VPNサーバーは初期費用が3万〜10万円程度、月額料金が1万〜20万円程度です。

それ以外に従業員は交通費と宿泊費を負担しなくてはなりません。交通費は東京札幌間の飛行機でLCCで15000円程度、長野県など近い場所でも5000円以上は必要です。宿泊費はホテルで泊まる場合、月に約10~15万円程度、旅館の場合は最低でも20万円以上はかかります。

交通費や宿泊費は経費の範囲外です。費用を減らしたい方はワーケーションの補助金制度を導入している自治体に行けば節約できます。様々な自治体が支援を行っており、お得にワーケーションを楽しめます。

ワーケーションのおすすめエリア

最後にワーケーションにおすすめのエリアをご紹介します。

函館(北海道函館市)

国内屈指の観光地ながら、ビジネス環境も整備されており、函館はまさにワーケーション向けの街です。夜景や温泉、豊かな海産物など休暇を楽しめる上に、都市機能が整備されているためコワーキングスペースも充実しており、公私ともに充実した時間を過ごせます。
参考:函館「WORK+VACATION in HAKODATE」

奄美大島(鹿児島県奄美市)

羽田・成田から飛行機で約2時間半程度の好立地ながら、透明な海と豊かな自然に触れられるのが魅力、マングローブ原生林でのカヤックは仕事のストレスを思い切り解消できます。また伝統建築物を再生した宿泊施設は、奄美大島の歴史を肌で感じながら快適に仕事ができると好評です。

参考:「奄美大島でワーケーション事業がスタートします」

軽井沢(長野県軽井沢町)

都心から車で100分で自然を楽しめる軽井沢もワーケーションのスポットとして人気です。戦後より観光地として発展した銀座通りは風情あふれる街並みで、休日を楽しみつつ、空気の澄んだ山々のコテージは仕事ができるため、ストレスレスな生活を送れること間違いなしです。

参考:軽井沢ウエストプリンスホテル「軽井沢・リゾートワーケーションプラン」

瀬戸内海・しまなみ海道(広島県尾道市・愛媛県今治市)

島々に囲まれた瀬戸内海・しまなみ海道は島ならでは暮らしや遊びと、快適な仕事環境を両立したスポット。仕事合間に広島県尾道市と愛媛県今治市を自転車で回り、島々の自然を楽しむことで、体も心も癒すことができるワーケーションスポットです。

参考:HIS「今治・しまなみワーケーション」

ワーケーションをきっかけに移住を検討しよう!

ワーケーションを始めると、仕事の生産性を上げながら豊かな自然で毎日をより楽しむことができます。これから地方創生が進むにつれ、地方で仕事をする習慣は更に広まるでしょう。

短期間のワーケーションを通じて、住まいを地方に移す事例も一般的になりつつあります。「都会の喧騒より、自然で生活してみたい」と思われた方は、ワーケーションで気に入った土地に移住を検討してみてはいかがでしょうか。

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