移住者インタビュー

移住の“先輩”インタビュー 「どこに暮らすのか?」の一番の決め手となるのは、関わる人たちの「人の良さ」|小谷祐介さん・沙耶香さん(東京→島根県雲南市)

島根県雲南市

移住を考え始めた経緯や移住先の選定基準、移住先の物件探しのポイント……「移住」といっても移住が実現するまでの道のりは人それぞれ。では、移住を実現した“先輩”たちは、どうやって移住後の暮らしを形にしていったのでしょうか。先輩の体験談を通して、(良い意味でもそうでない意味でも)実感した移住の理想と現実、移住のために実践してみたことなど、「移住のリアル」を紹介します。
今回話を聞いたのは、島根県雲南市に移住した小谷祐介さん・沙耶香さんご夫妻です。祐介さんの転職を機に島根県に移住することになったおふたり。ピアニストとして活動する沙耶香さんも、新天地で新たな一歩を踏み出すことになりました。そんなおふたりに、移住するまでの道のり、実際に暮らしてみて実感した感想などを聞きました。

タイムリミットのある中で進めた移住準備
転職を機に結婚、そして東京から島根に移住

移住のきっかけを教えてください。

祐介さん:僕が島根県松江市に拠点を置く一般財団法人に転職することになったのがきっかけです。僕はこれまで私立中学校の経営支援をする企業や私学職員など教育業界で経験を積んできました。その後、教育システムを変えるようなことに携わりたいと考え始めた際に、今勤める法人にめぐり合ったんです。ですから転職先の拠点がある場所だから島根県に移住することになった、という感じです。

雲南市転職を機に雲南市での暮らしをスタートした小谷沙耶香さん(左)と祐介さん(右)

これまで島根県を訪れたことはあったのですか?

祐介さん:それが、僕も妻も一度も島根県を訪れたことがなくて。

沙耶香さん:移住が決まったとき、周りからは「島根って聞いて驚いたでしょう?」「嫌だって思わなかった?思ったでしょ!」と言われることが多かったんですが、住む場所にあまりこだわらない性格なのもあって、私としては周りが言うほどの抵抗感はありませんでした。

祐介さん:僕が転職と移住の話をしたときも「そうなんだ」くらいで、あんまり大きなリアクションはなかったよね(笑)。

偶然にも転職がきっかけとなりましたが、もともと移住には興味を持たれていたのですか?

祐介さん:転職の話題が出る前から、ゆくゆくはのんびりした地域に移ろうかという話はしていたんです。空想レベルですけれど。例えば山梨や長野、群馬、栃木といった、都心部にもアクセスしやすくてのんびりしていそうな地域で、ログハウスを買って暮らすのも面白そう、とか。思い描いていた暮らしを実現する場所が、結果として島根になったという感じですね。転職と移住が決まった段階はまだ婚約中だったので、移住生活が始まるタイミングで入籍しました。

物件検索サイト、自治体の移住促進事業など、使えるサービスはとことん活用

東京で生活しながらの物件探しは大変だったのではないでしょうか? どのくらいの期間がかかりましたか?

祐介さん:内定が出てから物件探しをスタートし、決まるまで2〜3カ月程度かかりました。転職先からは10月には働き始めてほしいといわれていたので、時間をたっぷりかけられるといった状況ではなく、加えてこちらの希望条件も多くて……。グランドピアノを置くことができて、演奏しても大丈夫な環境であること、そして以前から猫を飼っていたので、猫と一緒に暮らせることが絶対条件でした。物件探しは、一番苦労しましたね。

沙耶香さん:移住先でもピアニストとして活動する考えだったので、グランドピアノを演奏できる環境を整えることは必須でした。さらにペット可、となると条件的にはすごく厳しくなるんですよね。

祐介さん:条件をクリアするために、あらゆる手段を使いましたよ。物件情報サイトで検索するだけでなく、島根県への移住・定住の総合相談窓口を担う「ふるさと島根定住財団」の日比谷オフィスに物件探しの相談に出向きました。そこで、島根県への移住希望者を対象としたオンラインイベントを紹介してもらって、イベントに参加して情報を集めたり、僕の転職先の方々から情報をもらったり。最終的に、オンラインイベントでご縁のあった、雲南市で移住促進事業などを行う「うんなん暮らし推進課」の担当者さん経由で、空き家バンクの物件を紹介いただけることになりました。

集落移住促進事業のサポートもあり、雲南市の集落に移住することに

移住を決めた雲南市はどんなまちなのですか?

祐介さん:松江市はいわゆる地方都市といったにぎわいがありますが、雲南市は本当に穏やか。紹介いただいた物件のあるエリアも、いわゆる谷あいに位置する集落というような感じで、自然もいっぱいです。物件自体も状態が良く、一軒家なのでペットもOKで、床を補強すればグランドピアノも置けるとのことでした。住宅が密集しているわけではないので演奏しても問題なく、条件的にはぴったりでした。

沙耶香さん:あと、洋室が1室あったのも決め手になりました。もともと応接間として使っていたお部屋だそうで、玄関近くに位置していて。グランドピアノを置くのにちょうど良い広さでしたし、ピアノ教室をやるとなったら玄関からすぐの部屋を教室として使いたいと考えていたので、ちょうど良いなぁと感じました。

ピアノ1室をピアノ教室に。明るい日差しが差し込む

人との出会いが新たな出会いを生む

沙耶香さんは新たしい土地でイチから仕事の基盤を作ることになったわけですが、大変ではありませんでしたか?

沙耶香さん:正直、ピアノ教室は環境が整っていて「やります!」と宣言すればすぐに始められますが、ピアニストとしてどう活躍できるかについては、少なからず不安を感じていました。でも人の縁があったおかげで、いろんなところで演奏する機会をいただけています。風のうわさで私がピアニストだと知った方が次々と声をかけてくださって、あるときは隣町の小学校の教頭先生から直接連絡が入ったこともあって(笑)。移住の際にお世話になった市役所の方の紹介で、市の文化施設の運営団体にもつないでいただいて、コンサートの企画なども進んでいます。ピアニストが珍しい地域だからこそ、私のところに仕事が舞い込んでくるんでしょうね。気づいたら、思っていた以上に演奏させてもらえるようになりました。

コンサート移住後、ピアノコンサートを開催

どうしようもないこともあるけれど、「いいな」と思える場所ならやっていける
予想以上の「ポツンと」感に驚く

初めて雲南市を訪れたとき、率直にどう感じましたか?

沙耶香さん:正直、田舎すぎてびっくりしました(笑)。物件探しの際に1度だけ、1泊2日で島根を訪れることになって、空港のある出雲から松江まで、雲南を経由してレンタカーで移動しようってなったんです。その際に、こちらにも立ち寄って。あまりにも何もなくて、集落にポツポツと家がある、って感じで。改めて「自分って都会育ちだったんだなぁ」と実感しました。

祐介さん:イメージしていた田舎暮らしと比べて、何段もレベルの高い光景を目の当たりにして、戸惑っていたよね。僕の地元もそこそこ田舎ですけれど、そこよりも田舎度が高かったですから。

沙耶香さん:でも次の日に物件候補を案内してくださった雲南市の職員さんがとってもいい人で。今暮らしている物件を紹介するときには、リフォーム会社の担当者さんや以前の持ち主の親族まで招いて、いろいろ丁寧に説明してくださったんです。その後、移住者の方が経営する飲食店でごはんも食べさせてもらって。人の良さに触れたおかげで、機嫌を取り戻せました。

訪問時雲南訪問時のことを振り返るおふたり

多少の不便さは工夫すれば折り合いをつけられる

実際に暮らしてみた感想をお聞かせください。

沙耶香さん:まったく不満がないかといえば嘘になります。でも人の良さを感じられるまちなので、やっていけると感じますね。

祐介さん:予想以上にカメムシが多かったのは難点ですが(笑)、僕自身は田舎出身なので「田舎に戻ってきたな」という感覚が強いです。多少の不便さも許容できるというか。ご近所付き合いも、付かず離れずの程よい距離感を保てていると感じます。

沙耶香さん:私は車の免許も持っていないので、正直大変に思う場面はたくさんあります。でも、それなら免許を取ればいいだけ。今感じている「大変」とか「嫌」って、なんとか解決できるものがほとんどで、人間関係など自分ではどうにもならない「嫌」は本当に少ないんです。それがありがたいというか。ゆくゆくは免許も取りたいなと思っています。

移住者同士のつながりなどもあるのでしょうか?

祐介さん:今暮らしているエリアだと移住者は僕らだけですが、雲南市の移住者コミュニティーがあるので、集まりに参加してつながりをつくるといったこともしやすいと思います。あと、僕らの暮らすエリアに限らず、雲南にもともと暮らす人たちは移住者に対してとってもウェルカムな対応なんですよね。「このまちに来てくれてありがとう!」って言ってくださる方も多くて。以前参加した自治会の集まりでも、年長の方が「古い考えや伝統も大事だけれど、このまちに暮らし始めてくれた小谷家や、今後もいろんな人が入ってきてくれるためにも変化していかないといけないよね」と熱く語っていたんです。移住者を受け入れるという考え方が根付いているんだなと感じました。

沙耶香さん:島根県全体で人口減少が課題となっているので、行政だけでなく暮らしている人たち自身にも危機感があるのだと思います。移住者を受け入れないって選択肢は、むしろないんじゃないかなと思います。

祐介さん:島根県は海士町のように人口のV字回復を実現した地域もあります。そういった事例も参考にしながら雲南市など各自治体が頑張って盛り上げている印象がありますね。

移住仲間移住者仲間が集まったときの1枚

良いところもそうじゃないところも、しっかり受け止めるのが大事

今後、移住を考えている人にアドバイスをお願いします。

祐介さん:物件を買うのであれば、ローンを組む段取りなどをある程度決めておくと安心です。僕らの場合、転職と移住のタイミングの兼ね合いで、ローンを組むことができなくて、資金調達に苦労しました……。一定期間在職していることを証明できないとローンが組めないことが多いですから、注意しましょうね。

これをやっておいてよかった!」と思うことなどもありますか?

沙耶香さん:オンラインの移住説明会に参加したことで、遠方にいながら移住候補のまちの特徴などを知ることができました。説明会でも、雲南市はダントツで雰囲気が良かったことを覚えています。いい感じにローカルさがあって、酸いも甘いもちゃんと発信してくれていると感じましたね。

祐介さん:変に取り繕わず、「人によっては嫌に感じるかも」といったところも含めて発信してくれているって印象があって、安心材料になりました。説明会で受ける印象、というのも大事な指標になると思いますよ。

移住に迷ったらまずはこれ!
LINEでかんたん移住診断。 何でも聞ける、移住の相談窓口 “スタイルチャット”を覗いてみる
インタビューバナーインタビューバナー
ABOUT ME
移住スタイル編集部
移住スタイル編集メンバーが更新します。移住をこれから検討する方のために、移住に関する、最新情報やノウハウをわかりやすく紹介します!
関連記事
移住に迷ったらまずはこれ!
LINEでかんたん移住診断。